2009年11月25日

廃棄物資源循環学会 平成21年度技術セミナー「白老町」

ひきつづき廃棄物資源循環学会技術セミナーです。
ここでは白老町での取り組みについて、セミナーと現地見学の様子を報告します。
__。__。__。__。__。__。__。__。__。

セミナー『地域融和型バイオマス利活用システム(自治体における取り組み)』
        北海道環境生活部環境局循環型社会推進課 萩原康政 氏
現地見学『ecoリサイクルセンターしらおい』

  
写真は左から【搬入されたゴミの貯留所】【高温高圧処理装置周辺】【生成物:黒い粉状物質】

[北海道の取り組み]
◆北海道循環型社会推進基本計画(H17.3)
◆北海道循環型社会形成の推進に関する条例(H20.10公布)
・第3章 推進施策の条項が特徴的な部分
◆めざすのは3つの社会(低炭素社会、自然共生社会、循環型社会)の統合

[白老町の事例]
◆製紙産業(大企業)があり、食品産業、農畜産業、水産業、観光産業、木材業、窯業、骨材採取業などを有する特色ある町 → 多様な産業構造は、バイオマス資源が豊富に存在
◆一般廃棄物はH12まで(白老町単独の)焼却炉で処理、その後ダイオキシンで停止。
 H12〜H20までは登別市との広域処理。H21年4月〜高温高圧処理による燃料化
◆事業化によるメリット
 ・CO2発生量の抑制(廃棄物から燃料を生産し、化石燃料を減量)
 ・リサイクル率の向上:導入前のリサイクル率は約14%、
            可燃ゴミをバイオマス燃料に加工することにより、90%程度に向上
 ・ゴミ処理経費の削減(の見込み)
 ・最終処分場の残余年数の延命化および整備費用の軽減
           :減容化による埋立処分量の大幅削減、処分場増設の場合も規模縮小可

[ecoリサイクルセンターしらおい(バイオマス燃料化施設)]
 総事業費:約14億円 
 補助制度:1/2 地域バイオマス利活用交付金(農水省)
      1/2 地方債(一般廃棄物処理事業債 充当率90%)
 事業内容:新技術などの実証(バイオマス等を蒸気を用いて高温高圧条件下で改質し、
                           固形燃料の原材料とする技術)
 高温高圧処理量:37.6トン/日
 生産量 : 約11,000トン/年
 所在地 :日本製紙(株)白老工場の構内(エネルギー需給、販路確保の関係)
      ※中圧蒸気と電力は日本製紙工場から供給を受けている

◆高温高圧(235℃・30気圧)処理工程(1バッチ標準タイムテーブル)全行程:6時間
 投入(30分)→ 加温加圧(60分)→ 減圧乾燥(210分)→ 排出(60分)
◆処理できないもの:金属、ガラス、陶磁器類、ゴムなど
◆排水処理と脱臭:
 ・高温高圧処理機からの排出ガス(排蒸気)を冷却(ドレン水)→ 活性炭脱臭して大気へ
 ・雑排水(ピット排水、洗浄排水など)
         ↓
  ドレン水は BOD 7,000〜8,000mg/L(量は投入ゴミの水分量による)
  全ての排水は活性汚泥により生物除去(BOD 600mg/L以下)し、公共下水道へ

◆処理しているゴミの内容:
 ・家庭系可燃ゴミ(生ゴミ、雑紙、プラも含む:含水率50%):収集量24〜25トン/日
 ・水産加工廃棄物、食品製造廃棄物、家畜排泄物(いずれも含水率80%)

◆生成物の熱量:白老町の場合 約6,000kcal(プラ、紙なども含まれるため)
        参考)純粋な稲ワラや麦かん 約3,000kcal
           石炭 6,000〜6,500kcal
           月形程度の分別ゴミなら約4,500kcal(補助燃料として使用可)

◆生成物の特徴:・安定的に貯蔵できる(自然発火しない)
        ・固形化しなくても燃料として使える(熱量はゴミの成分による)
        ・塩素を含むため、バイオマス専用ボイラーなどが必要

[高温高圧処理後の生成物の効果的利用方法の検討]
◆生成物をバイオバーナー・ボイラーで燃焼させ、蒸気や熱を高温高圧処理装置で使用したい
  白老町では装置稼働のため年間約400kLの重油を使用(高圧蒸気製造とバックアップ用)
  生成物の1/2量で置き換え可能
◆現在市販されているバイオバーナー・ボイラーは新品で8,000万円程度(サイズ未確認)
 現在小型化、低価格化の研究が行われている → 量産できれば普及可能
◆高温高圧処理装置とバイオバーナー・ボイラーとのシステム実験を斜里町で実施
__。__。__。__。__。__。__。__。__。

この「高温高圧処理機」はバッチ式のため、小さな自治体(ゴミ量の少ない)に適したゴミ処理方法だと思います。
ただ、白老町のように蒸気や電力を供給してくれる企業が近くにない月形町でこの装置を導入した場合、生成物を燃料として使用できるバイオマスボイラーは必需品です。また、排水を処理する下水道は市街地にしか設置されていないので、設置場所によっては、このシステム以外に下水処理設備がなければなりません。また、白老町より詳細に分別が行われている月形町では、生成物の熱量が低いことが予想されます。

このシステムは非常によいのですが、様々な条件が白老町とは違うために、導入に際しては厳格なコスト計算が必要だと感じました。

もう一つ。ゴミ処理方法検討には、将来予想も大きなポイントになると考えられます。
今以上のエコ意識向上による分別の徹底、ゴミの減量。人口減によるゴミの減量。環境税等、政府の環境負荷に対する負担の増大・・・。
また今までの埋立処分場建設の経緯や、地域住民との約束や感情。第2処分場建設時期と規模の検討。新たな処理施設を建設する場合の場所設定と地域住民への説明・・・。

これらを様々な観点から検討し、最も有利で負担の少ない方法を導き出さなければなりません。
ゴミ処理に関して、行政と議会の責任は大きいと考えています。

 

1

▲TOPへ戻る