2011年06月12日

岩見沢のごみ処理を考えるシンポジウム

6月11日午後、岩見沢市のコミュニティプラザで「岩見沢のごみ処理を考えるシンポジウム」が開催されました。主催は、岩見沢市のゴミ問題の解決策を探るために集った市内7つの市民団体による「新たなゴミ処理方法を考える市民の連絡会」です。

20110611b.jpg会場には200人近い市民の方々が集まり、質疑や意見等も多数出るなど関心の高さを感じました。
また岩見沢市議の姿も多数見かけました。過去に同様のテーマで小規模の学習会が開かれ私も参加しましたが、その時は市議の姿はほとんどなかったので、以前に比べ議会も関心を高めているのを感じます。

加えて、会場では署名運動も展開されていました。こちらは「岩見沢市に対し、新しいゴミ処理方法に関して市民との対話の場を設けること」を求める署名で、5月27日〜6月11日まで展開し、13日開会の市議会に提出予定とのこと。会場に集まった人の多くが署名に参加していました。
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さてシンポジウムは、
基調講演『ごみ処理・資源化の方法と ごみ処理計画の考え方』と題し、ゴミ処理の基本的な知識と解説がありました。
講師は、北海道大学大学院工学研究院教授の松藤敏彦氏です。

■ごみ処理に関する過去からの流れ

 ・環境に関する考え方は50年前とは全く違う → 変化する(変化が速い)
 ・50年前の東京)生ごみの直接埋立 = 埋立処分場のハエ対策に重油を撒いて燃やす
   → 煙・粉じんの問題 → 大量の薬剤散布 → 生ごみの焼却
 ・日本のごみ焼却の歴史は約100年。燃やすことで1/20の容量になる、衛生的処理ができる。
  40〜50年前、日本のごみ処理は「焼却」が大幅に増える = 補助金制度による
 ・焼却を推進してきたために、分別は「燃やせるごみ」「燃やせないごみ」になった。
  世界的には「資源化にできるもの」「資源化にできないもの」という概念で分別されている

■埋立処分場の特徴と問題点

 ◎埋立処分場の3要素「ガス抜き」「覆土」「遮水と侵出水処理」
 ◎埋立処分場では水の管理(排水処理)が最も重要
 ・遮水シートを張っても水が溜まっている状況を作れば漏れる可能性がある。
 ◎埋立は全ての固形廃棄物を扱うことのできる唯一の処理方法 = 要らなくなることはない

■様々な生ごみ処理方法のメリットとデメリット

【埋立】
 ・埋立処分場に「生ごみ」が入ることで管理期間(安定化する=変化が終わるまで)は長くなる
  (処分場に「生ごみ」がそのまま入っているかいないかの差は大きい)
 ・嫌気性(空気のない状態)では「生ごみ」は分解しない
   = 分解しなければ水処理期間の長期化必須 → 管理期間の更なる延長
 ・水分があると空気が入らない=嫌気性になる(生ごみは多くの水分を含む)
 ・滞水状態(水が溜まっている状態)では排水と換気が機能しない=嫌気性になる

【堆肥化】
 ・堆肥化そのものは単純だが、堆肥化施設は比較的高度である(実施している自治体は少ない)
  = 焼却より高コスト(小規模にならざるを得ないのも理由の一つ)
 ・分別の徹底(住民の協力)と、利用先の確保が重要な鍵

【メタン発酵(バイオガス化)】
 ・生ごみ量の確保(施設を安定的に稼働するには一定量の生ごみが必要)
 ・発酵槽の加温が必要
  (発電等で取り出したエネルギーを使う。ただし、北方ではエネルギー収支マイナス)
 ・高額な水処理経費
  (家畜糞尿を原料にした消化液(汚水)を売ることはできず、下水処理並みの水処理必要)
 ・小規模施設にならざるを得ないので、焼却より高コスト

【水熱処理(高温高圧処理)と炭化処理】
 ・生ごみには必ず塩分が入っているので、生成物には塩素が含まれる=燃料化には対策必要
  水熱処理(高温高圧処理)も炭化処理も、生成物を洗う・薄める等の加工が必要
 ・生成物を燃やす場面でダイオキシン対策等が必要になる

【焼却炉】
 ・過去から100年以上にわたる技術の積み上げがある

【ガス化溶融炉】
 ・建設費(補助金あり)と維持管理費(補助金なし)が同程度=ランニングコスト大
 ・建設費が安い?・・・
  過去に受注競争があり、ダンピングの影響を受けて平均値が下がっている可能性がある
  建設費において、必ずしも正確な数字が出ていないのではないか
 ・再生スラグは使われない(ゴミを原料にしているので、何が入っているのか解らない)。
  また現状でも良質な鉄鋼スラグが10倍量も存在する
 ・技術的トラブルの発生は公にされていない(が、あるのではないか)。未成熟な技術。

☆資源化のポイント
  ○作った物をどうするか・・・出口の問題(利用する場を確保)
  ○資源化できなかった物をどうするか・・・埋立場の問題
  

■ゴミの実態(一人あたりの排出量とその分類)からの減量化施策への導き方

 ・「住民一人あたりのごみ量」と「ごみ組成」(=ごみの中身)から実態が分かる
 ・ごみの中で多くの割合を占める物を重点的に対策することで、減量化が進む
 ・ごみの減量化は制度設計(「目的=教育啓蒙、有料化による動議付け」と、それを達成するため
  の「方法=具体的なごみ減量化の手段」の明示)が重要

適切なゴミ処理をするためには「モノごとの適切な方法」と「処理方法を選ぶ」ことを、
 組み合わせて考えなければならない

 ○モノごとの適切な方法
 [紙類]  製紙原料>他製品>エネルギー回収
 [金属類] 素材利用
 [ガラス] 再生ガラス>他利用>埋立
 [生ごみ] 自家処理>生物処理>焼却>埋立

☆ゴミ処理が上手くいっている自治体の特徴
 ◎トップが熱心 ◎危機感を持っている

その後は、主催者側の市民団体から「生ごみの利活用に関する実践報告と提言」がなされ、質疑や意見交換が行われました。


今回の基調講演講師である松藤氏は廃棄物資源循環学会の副会長でもあります。私は以前、同学会のセミナーでお話を伺ったことがありますが、複雑な廃棄物の問題をそれぞれの要素として紐解き、理論に基づく明解な回答を示してくれるので理解しやすかったと記憶しています。今回も基礎知識も含め様々な事例を基に提示していて非常に分かり易く、有意義な内容でした。
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今回のシンポジウムは岩見沢市のゴミ問題をテーマにしていたものの、ゴミ処理の普遍的な基礎知識を広めることが主だったように思います。「基礎知識を得た上で、それぞれの自治体に応じた選択をして欲しい。」というのが松藤氏の主張で、様々な選択肢の特徴が示され、その組み合わせの重要性を強調されていました。

月形町民や職員、議員も今回のシンポジウムに参加していればどれほど知識が広がったか・・・少なくとも議員が今回の内容を基礎知識として身につけた上で「月形町のゴミ処理」に関する協議ができれば、どれほど身のあるものになるのか・・・議会内で勉強会を開催したいと要請しているのですが進まないのも現状。残念です。

政治的な均衡を保つことの重要性も理解できなくはないのですが、月形町民にとって最善の選択をするためには、その議論をする者(職員、議員、審議会委員)がある程度の知識を有し、大所高所に立った見解と選択が求められると考えます。恥や外聞など捨て実を取る、あるいは自ら積極的に学ぶ姿勢がなければ道を誤ってしまう可能性が高くなるのではないでしょうか。

【自分の町のことは自分で決める=地方自治の基本】
自由と権利を得るためには、努力が欠かせません。

それから今回、危機感を持った少数の人が行動を起こし「ごみ処理に対する自分たちの想い」を実現しようと様々な活動を展開して大きな運動に発展する様を、目の当たりにしました。まだ完全な成果には至りませんが、その動きはまさしく自治。この光景は、月形町の合併問題の時と似ています。

今まで「お任せ主義」だった住民が問題に気付き、行動を起こす・・・自治体の危機が自治を目覚めさせるのですね。
どうか市民団体の方々にはさらに頑張っていただきたいし、それに呼応して議会(議員)も行政も「住民自治」に近づくよう、新たな一歩を踏み出して欲しいと思います。

もちろん私達月形町民も他人事ではありません。岩見沢市のごみ問題を「お隣の話し」と受け流すことなく、自身の未来の選択のために動き出しましょう。

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