2012年03月09日

月形町・ハウス復旧で半額助成【2012.3.6 北海道新聞朝刊】の反響と個人的見解

『月形町 ハウス復旧で半額助成』という見出しの新聞記事(2012年3月6日 北海道新聞朝刊)への反響が大きく、私のところにも各方面から多数の問い合わせが来ていますし、直接多くの方と議論や意見交換も行っています。

議会での取り扱いは前のブログで紹介したとおり非公式な場で協議した段階です。金額的にも内容的にも今までにないものだけに慎重な議論が必要ですし、公平性や透明性の確保をどうするか意見の分かれるところでもあります。
現段階は、議案として提出されたわけでなく採決も行っていないので、議会の方向性(議会の判断)が確定したわけではありません。議会としての正式なコメントはできない状況です。

とは言え、地域や社会の関心が高い事業であり、新聞で公表されている内容もあるので、この件に関する私見をここに記したいと思います。

ハウス復旧で半額助成 月形町 雪害で独自支援策 [北海道新聞 2012年3月6日朝刊]

【月形】空知管内月形町は5日、記録的な大雪に伴い農業用ビニールハウス損壊の被害が相次いでいることを受け、復旧にかかる資材購入費の半額を農家に助成する独自の支援策を発表した。
 町と月形町農協は、町内の農業用ハウス約1500棟のうち被害は約600棟に上ると推計。同町はこのうち300棟が全壊、残りが半壊と見て試算し、支援事業費は9720万円を見込む。5日から調査を始め、被害が確定次第、補正予算に計上する。
 記者会見で桜庭誠二町長は「町内の農業生産額の半分は施設園芸の花きや果菜類が占めており、営農計画を立て直す農家のため、早急に支援を決めた」と述べた。

月形町の基幹産業は農業であり、総生産額22億円のうち11億円を施設園芸(花き・果菜)が占めていて、町長の発言にも「生産額の半分を占める」ことが強調されています。しかしそれ以上に重要なのは、施設園芸が【労働集約型農業=たくさんの雇用を生み、資材投入額も大きい】である点です。

以下が、私の認識する『施設園芸の特徴と月形町における位置づけ』です。
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【雇用の場=人口維持】
雇用の場が少ない地方において、労働集約型農業はとても重要な雇用の場です。小規模経営も可能で農業者数が多いのはもちろんですが、花きや果菜は軽作業も多く、高齢者や女性の職場として重要な位置を占めています。

【地域経済の牽引役】
土地利用型(米・麦・大豆等の栽培)に比べ資材投入費(肥料、農薬、ビニール等の栽培資材、段ボール等の出荷資材、他)は格段に大きく、資材の取扱業者や金融機関にとって重要な顧客になっています。
また、売り上げの回収サイクルが早いことも特徴で、地域経済を回す原動力になります。
それに、間接的には雇用されている人々の経済活動もあります。
様々な側面から、生産額は11億円であってもその経済効果はその何倍にもなり、経済重要度は見た目以上のものと言えます。

【耕作地の維持】
中山間地の月形町にとって施設園芸はなくてはならない農業形態です。国は大規模化を促進していますが、耕地面積を広げるにはいくつかの条件があり、山に近い月形町では適さない土地が多くあります。また転作作物として奨励してきた歴史もあります。
農地の有効活用のためにも、耕作放棄地を出さないためにも、施設園芸は必要です。

【農村部の地域維持=農家戸数の維持】
農道や灌漑(かんがい)施設を含む農村部の地域維持は、農業者を中心とした地域組織が担っています。草刈りや排水溝の掃除など人手が必要な部分も多く、ある程度の農家戸数がなければ維持できません(労働を金銭で補完する仕組みはありますが、全てを依頼できるほど農業収入が多くないのが現実です。)。
国の施策である大規模集約化・土地利用型農業を進めることは農家戸数を減らすことにもつながるので、地域の特長を活かした農業(月形町の場合は施設園芸)で農家戸数を維持することは非常に重要です。

【地域の一翼】
地域を守るという観点から農業を見ると、土地利用型の大規模農業と労働集約型の施設園芸が混在することで地域全体をカバーし、最も効率的で競争力のある『地域産業』になると考えます。
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これを踏まえた上で今回の豪雪状況を見ていくと、(全容は解明されていませんが)パイプハウスが大きくダメージを受けたことは予見できます。何らかの対策をとらなければならないのは明白でしょう。

しかし「パイプハウスは個人資産だから税を投入することはどうか」という意見もあります。

月形町における施設園芸の位置づけを考えた場合「パイプハウス=生産インフラ」とも考えられ、その整備が地域社会全体に波及するのであれば、私は問題ないと考えます。つまり「地域振興策」「農業振興策」としての支援です。

ただし投入には「公平性」と「透明性」が担保されなければならず、そのための「評価軸」が必要です。また豪雪がきっかけとなって支援するのですから、次に建てるハウスには危険回避=強度強化の考え方も必要でしょう。いずれにせよこれらは「政策」です。明快な理論(根拠と具体的な施策)が必要になってきます。
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マスコミを通し「パイプハウス支援の具体的な数字」が公表されましたが、表現が端的で誤解を招く部分があったのが残念です。また町側も、政策意図や理論がまだ充分に定まっていないようで、時によって表現がまちまちなのが気になります。

もし議決を経てからの公表であれば、この点は解消されたでしょう。しかし「営農計画を立て直す農家のため、早急に支援を決めた」と町長が言うように、この施策の場合はスピードも欠かせません。スピードを重視した分、説明不足になってしまったとすれば、そこをフォローするのも議員の役目と思います。

そこで、この件について、3月定例会の一般質問(3月14日)でとりあげます。
詳しい質問内容は次のブログに。今回の論点は「農業振興策」か「災害復旧」なのか、です。

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