2014年11月13日

はれん職人という道【テレビ番組のご案内】

今日は普段とちょっと違って、テレビ番組のご案内です。

本日(11月13日/木)夜9時から放送される「和風総本家」という番組で、ばれん職人/後藤英彦さんと、木版画家のデービットブルさんが紹介されます。実はお二人とも、うちの娘の師匠(先生)です。私の娘は現在21歳。3年前に地元高校を卒業し、ばれん職人になるべく後藤さんの工房(ばれん工房 菊英)の門を叩きました。

なぜ「ばれん職人」をめざそうとしたのか・・・
(以下は母親としての私の見解で、本人の言い分とは違うかもしれません。あしからず。)

娘は小さい頃からコツコツ、黙々と同じことをやるのが好きでした。2歳の頃、私のあとをついては畑の草取りを黙々とやってみたり、学童保育では毛糸を一玉鎖編みしてみたり、好きな石を見つけるために何時間も砂利敷きの場所でしゃがみ込んでいたり・・・。

その娘が高校生になって進路を考え出したとき、おぼろげながら「職人」という選択肢が浮かんだそうです。ただ、どんな職人(職種)があるのか、どうやったら職人になれるのか皆目見当がつかず、かといって大学進学という姿も描けず・・・何となく宙ぶらりんの状態で過ごしていました。

そんな時にたまたま見たテレビ番組、そう、この「和風総本家」で「ばれん職人の後藤さん」が特集されていて、その仕事にビビッと来た娘は早速手紙を出し、何度かやりとりした上で神奈川県のご自宅兼工房に伺い、最終的に弟子入りすることができました。色々な好機が重なった末の結果で、とてもラッキーでした。

上京して、ばれん作りを覚える傍ら、ばれんを使う場面(=木版画の制作)の知識も必要と、木版画の代表である浮世絵を勉強することに(浮世絵は絵師=えし、彫り師=ほりし、摺り師=すりし、で成り立っている)。彫り師の朝香元晴先生のもとで1年間彫りの基本を学び、並行して木版画家デービットブルさんのもとで摺りを学んで、今はそのまま摺り師としての仕事もしています。

娘が「ばれん職人」になったことで、私も伝統工芸や木版画の世界を知ることになりました。それぞれの先生方にお話を聞き、工房や作品や技術を見せていただいて、こんな世界があるのか!と、驚きと感心でワクワクの連続でした。あまりにも知らない世界だったので興味は尽きません。

そもそも「ばれん」がどのようにできているのかを知ったのも、娘が職人になってから。
1番上の写真は普段見る外観ですが、薄い竹皮を外すと黒い板のようなものがあり(2番目の写真。これはベニヤに黒い塗装をしたものだが、本来は和紙を何枚も塗り重ねて板状にしたものに黒漆を塗って作る)、それを裏返すと3番目の写真のように、中には竹の皮を編んでとぐろを巻くように綴じつけたものが入っています。この編み目(4番目)の大きさで摺れ方が違うそうで、用途に合わせて様々な種類があるとか。また、表面の竹皮は消耗品で穴が開けば張り替え、中心の編んだものは何度も編み直しが効くそうで100年も使えるとか!! 全く知らないプロの世界です。
この本格的な「ばれん」を職業として製作しているのは後藤さんただ一人。後藤さんは製作教室を開いたり、大学で教えたり、様々な形で「ばれん」を普及しようとしています。

今、この木版画を含む伝統工芸を支えている(趣味の域から仕事まで様々な形で関わっている)のは、女性が多いようです。皆さん、その経歴も仕事の仕方も様々。うちの娘は「ばれん職人」「摺り師」「飲食店のアルバイト」を掛け持ちして生計を立ていますが、他の皆さんも色々やっていて、これまた感心しました。
__。__。__。__。__。__。__。__。

職業を選択するとき、それまで触れた職業にしか就けないですよね。私自身の場合、子どもの頃一番なりたかった職業は「学校の先生」で、次に「農業関係の仕事(跡継ぎではないから農業には就けないと思って、普及員や研究者になりたかった)」でした。いずれも身近なものです。そのために大学に行くのが当然で、それ以外の道は考えもしませんでした。

もし、娘のような職人の道を知っていたら・・・

今、ほとんどの人が大学に行く時代ですが、それはサラリーマンが最も身近な存在だから。もし職人という道がもっと周知されれば、興味を持ったり、適性を感じて進む人もいるでしょう。職業選択の幅が広がれば、もう少し楽しく、前向きに暮らせるような気がします。

今、職人を目指す人、特に道具を作る職人が減っているそうで、木版画の世界でも刷毛を作る職人がいなかったり、和紙を漉く道具を作る職人がいなかったり、挙げればきりがないとか。現在は今ある道具を大事に使って間に合っていても、それが壊れたときには仕事ができなくなるかもと心配しているそうです。

今回の放送で、興味を持ってくれる人が出てきたら嬉しいです。
そんなことで、もし良かったら番組を見てくださいね。うちの娘もちょっと映っているかもしれませんし(← 親バカです)。

1

▲TOPへ戻る