2015年02月13日

「いわ☆ぴか」が動き始めました。【広域ごみ処理施設の現地視察】

日付が前後していますが、1月16日(金)に月形町議会議員全員で実施した「いわみざわ環境クリーンプラザ(愛称:いわ☆ぴか)」の現地視察を報告します。

「いわ☆ぴか」は、岩見沢市と月形町と美唄市が広域でゴミ処理をするために建設した焼却炉を中心にした施設です。敷地にはこの他、資源リサイクル施設(手選別ライン。岩見沢市のみが利用。焼却炉に併設)、最終処分場と浸出水処理施設(岩見沢市と月形町が利用)もあります。
※美唄市は焼却炉のみの使用で、灰は(相当分を)持ち帰る。

「いわ☆ぴか」の本格稼働は今年4月1日〜なのですが、試験運転として1月1日〜岩見沢市内のゴミを受け入れ処理しています。

月形町はこの「いわ☆ぴか」に月形町内で発生した「燃やせるゴミ」をパッカー車などで持ち込んで焼却し、その灰は「いわ☆ぴか」の最終処分場に投入します。一方、「燃やせないゴミ」は今まで通り月形町内の最終処分場に。「資源ごみ」「有害ゴミ」も今まで通り町内衛生センターで処理します。(これらの変更は、4月1日〜)

この処理方法変更に伴って、ごみの分別も変わります。

月形町ではこれまで、全てのゴミをそのまま最終処分場に埋め立てていたので、分別は「一般ゴミ」「資源ごみ」「有害ゴミ」という区分でした。これからは一般ゴミを「燃やせるか」「燃やせないか」という基準で分別しなければなりません。また、(各地区のゴミステーションを利用せず)衛生センターに直接搬入する場合は、「燃やせるゴミ」の中から「生ゴミ」だけを別にしなければなりません。

この他、今までは「有料ゴミ券」をゴミ袋に貼って出す方法でしたが、4月1日〜は「有料ゴミ袋」方式に変更になり、料金はほぼ倍になります(40 ℓ 40円 → 80円。ただし少額の小袋あり。直接搬入の場合の料金は 10kg15円 → 50円。資源ごみ・有害ゴミは無料のまま)。



これら分別方法の変更については、各戸に配布された「ガイドブック」や「分別表」で紹介されています。なかなか分かりにくいと思うので、各地域で随時開催される説明会でどんどん質問して、確認してみてくださいね。
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それでは「いわ☆ぴか」の視察の様子です。

まずは「搬入口」「ごみピット」
既に岩見沢市のゴミは全てここに運び込まれているので、ひっきりなしにパッカー車が入ってきます(上の写真)。

右の写真は「ごみピット」内部。この左側中央に搬入口があり、パッカー車から投入されたごみが左側の枠内に入ります。それを巨大なカギ爪のクレーンがつかみ、右側の枠に移します。この一連の動作はゴミを攪拌し均一にするのが目的です。その後、焼却炉の燃焼具合に合わせ、右の枠から(更に右側の)焼却炉へ、カギ爪クレーンでつかんで投入します。

次は「焼却炉」(写真は制御室)。24時間で50トンのゴミを焼却できるストーカ式焼却炉が2炉、設置されています。本格的に稼働すれば24時間(助燃剤=重油等なしに)940℃以上を保持しながら、連続燃焼できます。(ダイオキシンの発生を抑えるためには、常時850℃以上が必要なため。)

また、焼却でできた熱は併設された「高効率ゴミ発電施設(発電効率12%以上)」で電気に変えられ、施設内の電力をほぼ賄います。(売電するほどの発電力はない。不足分は北電から購入。)

“ごみピット”に集められた“ごみ”を見たのですが、容器包装プラや雑紙が相当混じっている印象です。岩見沢市の担当者からも「現状の分別ではまだ不十分で、予定焼却量を上まわっている。今後も啓発活動を続け、ごみの減量化に努めたい。」との説明がありました。

現在、岩見沢市では無料でごみの回収をしていますが、4月1日〜は有料(月形町とほぼ同じ水準)になります。有料化による「分別の動機づけ」の効果は高いと言われているので、期待したいですね。

というのも、この焼却炉で処理されるごみの約9割は岩見沢市から排出されるものだから(月形町は3%程度)。焼却量が減れば焼却炉の長寿命化が期待できますし、灰が減ることで最終処分場の延命が図られます。岩見沢市のごみ減量化の取り組みが月形町にも影響を与えるので、他人ごとではありません(もちろん月形町自身も更なる減量化の取り組みは必須です)。


この他、岩見沢市単独で使用する「リサイクル・手選別室」や、別棟の「浸出水処理施設(建設途中)」も見学してきました。
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この「いわ☆ぴか」の総建設費は 81億9000万円ですが、一番最初の予定総額は128億円でした。これほど大幅に減額できたのは、入札方式の変更や国の交付金金額が増えたことが大きな要因です。月形町の負担額も、当初予定額 3億8000万円 → 1億8800万円に大幅減額になっています(平成26年度当初予算段階。平成26年度決算で確定)。

とはいえ、とても大きな金額であることには変わりなく、焼却施設も最終処分場も1年でも長く使えることを願ってやみません。そのための努力は積み重ねなければ。現場を見て、強くそう感じました。

なお、平成27年度からは毎年この焼却施設のランニングコストが発生します。月形町の負担見込額は1876万円/年(平成26年度当初予算段階)ですし、ごみの収集や運搬の距離も手間も増えるので「塵芥処理収集および衛生センター管理業務(委託料)」が約3000万円 → 約6500万円に。この他に町内最終処分場関係経費やリサイクル関係経費が約3800万円かかるので・・・

これまで 6千万円程度だった年間の「ごみ処理経費」が、概算で1億2千万円にもなる見込みです(正確な数字は、3月定例会の平成27年度予算特別委員会で明らかになります)。年間予算が 32億円程度の小さな自治体にとって、大きな金額であることは間違いありません。

2015年02月10日

まちづくりの想いは同じ、方法はいろいろ【鹿肉&スノーシューツアー / CLUB MOON 】

雪深きこの時期、月形町内のあちらこちらに交流の場が出現します。

その目的は「まちづくり」。もっと楽しい暮らしにしたい、もっと交流を盛んにして活気を生み出したい、隣近所の知り合いを増やして安心な暮らしを・・・。まあ堅苦しく考えなくても、結果的に「豊かな田舎暮らし」の一要素がそこにあるのです。

今日はそのうちの2つをご紹介します。どちらも若者が「月形のために何かしたい」と企画・運営しています。今はまだ町内参加者が少なくて、“知る人ぞ知る”交流の場なのですが、私には魅力も可能性もものすごく感じる“交流の場”。
もし心惹かれたなら、次の機会にぜひ参加を! 

知らない場に参加するにはちょっと勇気がいりますよね。私も(こう見えて)人見知りなので、その気持ちよくわかります。でも、新たな出会いは勇気と行動から。企画・運営している“仲間”へのエールの意味も込めて、参加してみてくださいね。
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鹿肉&スノーシューツアー
「里のわくわく雪遊び in 月形・月ヶ湖」

主催は NPO法人コミュニティーワーク実戦センター月形事業所わくわーく。といっても馴染みがないかな? 彼らは「ニートやひきこもりの若者の就労支援をする団体」で、町内向けに言えば「市北の旧ブーメランの跡地に事務所を構える若者たち」です。

この「里のわくわく雪遊び」は、都市部から月形に移り住み月形で活動する彼らが、月形の良さを再発見したり、外部に発信していきたいと企画したのが始まりで、今年で2回目。いずれは外部の人を呼び込むイベントにしたいと考えているそうですが、今の参加者は口コミで集まった「友達の友達」くらいの関係者。町内からはNPOの職員と利用者と他数名、あとは岩見沢や札幌などからで総勢20人程(小学1年生も2人参加)。
晴天無風の穏やかで暖かな早春のような2月7日(土)に開催されました。

内容は2部構成。まずはスノーシュー(西洋かんじき)で雪の降り積もった月ヶ湖周辺を散策。北海道教育大岩見沢校アウトドア・ライフコースの山田先生と学生さんが、スノーシューの扱い方からコースガイドまでサポートしてくださるので、初心者にも安心。今年は1月下旬から1週間くらい降雪がなく、雪が締まった状態。その表面に前日から当日朝に少しの新雪がかぶり、とっても歩きやすい状態でした。

ツアーの途中では、野ウサギの足跡が無数に走っていて「生きてるぞ—!」と叫んでいるようだったり、雪面にはハリギリ(センノキ)の種付き枝が落ちていて太陽の熱を集めて凹みを作っていたり、太いつる性の木が漁網のように広葉樹の大木の表面を覆っていたり・・・。いつも見ている風景も、ゆったりした時間と物知りな仲間や興味の尽きない小学生と一緒だと、新鮮な輝きを放ちます。

最初の顔合わせから準備を経て、スタート地点に戻るまで約3時間。自然の起伏に身を任せて雪と戯れたり、耳を澄まして自然の息吹を感じたり、参加者同士で会話を楽しんだり、自然の中の1人時間で内面と向き合ったり・・・。自然や雪そして月形に興味が広がるひとときでした。

つづく第2部は、すぐ近くの南地区広域集落会館に場所を移し、鹿をテーマにした昼食交流会。まずは鹿肉シチュー。お料理上手なNPO関係者が数日前から仕込んでくれた、滋味深いホロホロほどける鹿肉のデミグラスシチュー。誰もが無言で何杯もおかわりしたのは言うまでもありません。添えてあった漬物は、協力関係にあるNPOサトニクラス(町内に事業所を構え、障がい者と農業をテーマにした就労支援A型の事業所。漬け物の製造販売)のもの。

一息ついて、鹿肉の提供者である公務員猟師の今井さん(実は月形町職員)から「猟師の暮らし」のレクチャー。今井さんは鹿撃ちだけでなくアライグマやキツネの駆除など、1年を通じて猟友会の仲間とともに(一部は個人で)活動していて、出勤前と帰宅後の巡回(狩猟ができるのは夜明けから日没までの間のみ)や休日の山での狩猟の様子などは、何度聞いても実に興味深い!!

そして実食。実は昼食の鹿肉も今井さん提供だったのですが、それとは別に料理好きで上手な今井さんが美味しい鹿肉の食べ方を提案。表面を湯引きした肉で作った“たたき”を3種類の特性ダレで食べたり、これまた特性ダレで揉み込んだ肉を焼いてステーキにしたり・・・。

今、口にした肉は、さっきまで遊んでいた月形の野山にいて、それを猟師が撃って、さばいて、熟成して目の前に提供されたもの。たくさんの人の手と手間が運んでくれた恵みであることが、身に染みる内容でした。
※というのは後から考えがおよぶことで、鹿肉を目の前にしたときはただひたすら舌鼓を打つのみ。人間=動物を意識させられた時でもありました。

【おすすめポイント】
月形の豊かな自然と暮らしを体験とともに紹介する企画は手作り感満点で、最初に細い糸が結んであるところ(口コミ)からスタートするところがミソかなあと思っています。派手さや大規模な集客は難しいけれど、本気の月形ファンが増えるのは確実。新たな”まちづくり”の可能性を感じています。本当は町内からの参加者がもっといて、月形の魅力を再発見し、誇りにして欲しいところ。町内外問わず、興味を持った方は連絡くださいね。取り次ぎします。
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CLUB MOON @ 月形町 dome TERA

みなさんは、CLUB(クラブ)ってわかります? 

私は全然わからなくて、DJがレコードをキュンキュン回しながらおしゃべりするディスコ? なんて思っていました。

実際は・・・ 
DJ(ディスクジョッキー)が自分好みのレコードを持ち寄り、担当時間(今回は1人1時間)いっぱいを使って切れ目なく音楽をかけていくもので、レコードとレコードのつなぎ方がスムースか、自分好みでありながら会場の雰囲気にあった選曲ができているかどうか、が重要だそう。DJは全く語らず、会場内も静かに音楽を楽しむ雰囲気。・・・かなり予想外でした。
ただ、重低音のビートが響いているのとミラーボールが回っていることから、建物に入るまでは「ディスコかも」と思わせるものがあったのは事実です。

この CLUB MOON 、実はある1人の個人が企画・運営しているイベント。出演交渉や会場の手配・準備、ポスター作りや配布、そして当日のDJも。お手伝いする仲間がいるとはいえ、入場料1,000円では到底つくれないイベントで、相当持ち出しもあるだろうなあという内容です。

その主催者、加賀一之さんは月形町在住の郵便局員(現在、美唄市内勤務)。5年前、月形郵便局勤務だった頃、「田舎でもパーティーしたい!」「月形町内でも若者が遊べる場を!」そんな想いで CLUB MOON をスタートさせました。

実は加賀さんと私、もう随分と前からの知り合いなんです。というのも、加賀さんは北海学園大学出身で森啓先生のゼミ生。森啓先生に触発されて「地方自治」や「まちづくり」に興味を持ち、いつか自分も実戦したいと考えていて、夜間に勉強を教える活動をしていたり・・・ 思考と活動が似ていることから、度々意見交換したり励まし合ったり。
お互いのフィールドは違うのですが「月形町を素敵にしたい」「月形町に活気を生み出したい」という想いは一緒で「若者を取り込む」視点も一緒。同志なんです。

そんな加賀さんが創り上げた CLUB MOON は、1,2ヶ月に1度、真夜中までの数時間、月形町内に現れる異空間です。その中に漬かっていると、ここがどこだかわからないくらい。音楽の好みはあると思いますが、私には「こんな時間が持てるのって、いいなあ♪」と思えるものでした。

【おすすめポイント】
きっとこの空間が気に入る人がいるはず。
ちょこっと勇気を出して、扉を開けてみてください。
特に、月形は田舎で寂しいところと思っているあなた、ぜひ! 
やみつきになるかもしれません。
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みなさん、どうですか? 
月形、捨てたもんじゃないでしょう?

月形には無鉄砲な若者がいるんです。夢を追いかけ、誰かと共有したいと思っている若者が。そして、それを実現できるようサポートする人たちも。私もそういう人に助けられて今に至りました。

この人が、力が、「まちづくり」の原動力。

ちょっと見方を変えれば、たくさんあるのに気づくでしょう。
私は月形に住んでから随分と育てていただきました。その恩返しは、育てていただいた方に返すのではなく「新しい芽を育てることに使わなくちゃ」と思っています。そうやって、まちの良さが引き継がれ、まちが育っていく・・・

みなさん、ぜひ一歩踏み出す勇気と行動を♪

2015年02月06日

農村社会・農業経済において、女性は新規参入者なのかも!【2015きたひとネットフォーラム】

2月5日(木)、きたひとネット(北海道女性農業者ネットワーク)の総会とフォーラムが北大でありました。会場には全道各地から120人近くの年齢も農業形態も様々な女性農業者と関係機関のみなさんが、1年に1度の楽しみと情報交換の場として集まっていました。

今年のフォーラムのテーマは「創る」。副題は「農業者である自分の10年後を創るため、今、何をする?」という投げかけ ・・・ はて、私自身は何をすべきなのか? どうしたいのか? ・・・ ここのところ「農業」づいている私は、様々な視点や状況に思いを巡らせながら、2年ぶりに参加してきました。

フォーラムの中心はパネルディスカッション。以下のメンバーで約2時間、会場も交えながら積極的な意見交換がなされました。
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パネルディスカッション 
テーマ「経営にどう参画しているの?」

パネラー  
■江面 暁人さん
 :江面ファーム(畑作/遠軽町/35歳)

・北海道出身の非農家新規就農者。
・大学進学のため東京へ。IT系企業で働くも、将来的な家族の有り様を考えた時、職業としての農業に魅力を感じ就農を決意。30歳から1年間北見で研修。その後、遠軽で2年間研修を行った農場を第三者経営継承で引き継いで独立。
・42haの農地で馬鈴薯、ビート、小麦、スイートコーンを作付け、多くは系統(農協)出荷し、一部をインターネット直販。加工(新商品開発)も行う。
・冬は民宿、夏はボラバイトの受け入れ等、アイデアを事業化。
・会場には奥さんも(子どもさんは会場内託児を利用)。ともに研修をし、事業を展開しているパートナーとしての意見は流石!

■荒川 恵美子さん:(有)オサラッペ牧場(肉牛/旭川市/64歳)
・京都出身。元保育士。結婚相手(非農家)と約40年前に新規就農。旭川へ。
・当初はホルスタイン雄仔牛の哺育育成をしていたが、肉牛(短角牛)に切り替える。こだわって育てた短角牛であっても、サシの有無で等級が決まる今の市場では高値が付かないことから、自分で加工も手がけ、直接販売する。
・その後、ゲストハウス・オサラッペを建て、農家レストラン&ファームインも。自ら全てを行うことで経費を抑え、お客さんに安くて美味しい肉を喜んでもらうために事業展開。

■高木 智美さん:高木農園(畑作/京極町/36歳)
・京極町出身。畑作農家の元に生まれ育つ。
・農業が嫌いで別の道に進もうとしたが就職氷河期。実家に戻り、夏は農業の手伝い、冬は職探しの日々。
・京極町4Hクラブで「楽しい農業」に目覚める(=農業技術や理論を学び、農作業の意味が理解できるようになり、毎日の作業にやりがいが出てくる)。
・その後、幼なじみと結婚、親世帯と同居。結婚3年目には経営移譲され、次の年には家族の役割変更(家事・育児はお義母さん、若夫婦は農業専念)。
・30haで馬鈴薯、ニンジン、小豆、他を作付け。夫も本人もトラクターに乗り農作業をする。農業の様々な面を知ることで興味が増し、農業がおもしろく、意欲も湧いている。

■角倉 円佳さん:(株)マドリン代表取締役(酪農/広尾町/31歳)
・広尾町出身。両親は新規就農者で、大規模な酪農経営(分業スタイル)。
・当初は酪農をする気がなかったが、高校、大学と進み、カナダケベック州の酪農研修先で理想の酪農スタイル(分業でなく、酪農の全サイクルに関わり全てを見ることができる酪農)と理想の経営者に出会う。
・帰国後実家で働いていたが、タイミングよく借舎で自分の牧場を持つことができた。搾乳牛40頭、育成牛と仔牛が40頭。全てを1人で管理。
・女性後継者も農業関係機関や会社で働く女性も増えてはきているが、未だ少数。既存の組織の中では視点が違ったり、理解されないこともあり、時に押しつぶされそうになる。仲間作りのため、同じ状況の人たちと年1回SAKURA会を開催している。
・この春に結婚し、近所に場所を移し全て自前の牧場を持つ。今後は1つの家庭として地域活動の担い手の役割も出てくる。今までとは違う状況だが、家族でがんばりたい。楽しみ。

コーディネーター
■植田 喜代子さん(酪農/湧別町/64歳)
・京都市出身。
・深川市の牧場で夫と出会い結婚。道内行脚の末、現在地に新規就農。
・北海道指導農業士。認定農業者。
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パネラーのうち、高木さんと角倉さんは地元育ちで経営参画する農業者。もし男性なら、いわゆる「後継者」として一般的な立ち位置なのでしょう。
けれど女性であるが故に農業に対する視点や感覚が違っていて、彼女たちのやりたいことが「今までの経営者」とも「今までの奥さん方」とも違っていました。自分のやりたい農業を既存の雰囲気の中で実現するにはエネルギーが必要で、それはまるで《新規就農者のようだ!!》と私は感じました。

それから彼女たちには理解者・応援者がいました。
高木さんは何度も「とっても良いお義父さんとお義母さんなんです。」「(夫は)やりたいって言ったら、やらしてくれるんです。」と言い、角倉さんも「(お父さんが)おまえやってみるかと言ってくれたので(やりたい酪農ができた。)」と言っています。彼女たちを《理解し、任せる人がいる》からこそ、彼女たちの「農業が好き」という気持ちと意欲がどんどん育っていったのでしょう。そういう支える人の存在もまた《新規就農者みたいだ!!》と思えました。

と、私はここまで《新規就農者みたい!!》と言いましたが、キチンと表現すれば、彼女たちは《開拓者》です。今までと違う側面を切り拓く開拓者。

既に成熟した社会というけれど、モノの見方、考え方をちょっと変えるだけで、開拓されていない分野はたくさんあり、伸びしろも、面白さもそこにはあるんだなあと再認識。そうですよね。そうでなくっちゃ息苦しい世の中しか残ってない。そんなはずないもの。
その切り口を《女性》が持っていることは確か。農業分野だけでなく、社会全体もそう。そう《女性》が切っていかなきゃ。

最初、農業が嫌いだった彼女たちが、今のように意欲的になったプロセスは以下の通り。そのポイントにキーパーソンが出てきたのも共通してて、実におもしろかったです。
嫌い → 知る → 興味 → 好き → 意欲 → ・・・
まちづくりや子育てにも応用したいですね。

2015年02月04日

新規就農者の赤裸々な経営実態を披露【花・野菜ベーシックセミナー講師】

今日は立春。朝からずっと快晴の青空で、お日さま具合を見ていると「あ〜、春も近いなあ〜」とのんきな気持ちになりますが・・・ 今朝は放射冷却でこの冬一番の寒さ。月形町でも−19.7℃まで下がりました。窓には氷の花が咲き、ストーブも真っ赤に燃えていましたよ。

さて、本題。就農アドバイザー関連報告です。

このベーシックセミナーは毎年開催されています。興味を持たれた方は花・野菜技術センターまで問い合わせしてみてください。この他、4月から半年間の実地研修を主体とする総合技術研修や各種セミナーも開催されています。詳しくは→こちら。

本編をまとめるのに時間がかかってしまったので、前振りとは雰囲気が違う文章ですが、そこは目をつぶってくださいね。
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1月28日(水)、滝川市にある地方独立行政法人北海道立総合研究機構 花・野菜技術センターで講師を務めてきました。5日間にわたって開催されている新規就農者向けの【花・野菜ベーシックセミナー(基礎技術研修)】で、先輩就農者として経営事例と動向をお話しするためです。

セミナーには全道各地から、新規参入者(=農家以外から就農する人。研修中の予定者も含む)やUターン就農者(=農家の後継者)計27名(花きコース5名、野菜コース22名)が集まり、併設された研修所に寝泊まりしながら研修を受けます。

研修内容は、それぞれのコースに分かれて学ぶ基礎技術科目[栽培概論、栽培基礎Ⅰ〜Ⅴ、輸送と鮮度保持(花きコース)、流通と内部品質(野菜コース)]と、共通科目[土壌改良と施肥管理、施設資材の特性と利用、経営管理概論、新規就農者の経営事例と動向、経営事例の総合討論、農地制度の基礎、病害虫]とがあり、毎日午前9時から午後5時まで行います。

講師は花・野菜技術センターの普及指導員や研究員が中心ですが、外部講師として北海道銀行地域総合研究所の上席研究員(経営管理概論)や北海道農業会議の業務次長(農地制度)の他、北海道農業公社就農相談課の就農コーディネーターや先輩就農者(花き・野菜各1名)が加わりました。
私は講師(花き生産の先輩就農者)の1人として、「新規就農者の経営事例と動向」と「総合討論」に加わりました。

講義「新規就農者の経営事例と動向」の内容は以下の通り。研修生が何を知りたいのかを自分なりに突き詰めていったら、以下の内容になりました。
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1.自己紹介・・・ まずは普段の私をさらけ出し、私を理解してもらう。

私の作業着姿や家族構成、借家である自宅、自宅から1㎞離れた圃場に建てた撰花場、古くて錆び付いたハウスや使い回しのビニール、2012年の豪雪で倒壊したハウスの様子など、きれい事でない現実を紹介。

2.経営の基本姿勢・・・ 栽培している花と選択した理由。技術や着眼点など。

ポイントは
■新しい技術の導入や種子の個人輸入など、労力と経費の節約に努め、効率的な経営をめざしている
■生産する品目は需要側の視点で選定している(物日、ニッチ市場、リスク分散)

3.20年間の経営状況・・・ 年次ごとの借金返済額・農業収入額・所得額の推移

この部分はかなり赤裸々に紹介(ちょっと恥ずかしい現実)。農業収入が上がっても所得が増えない実態や、思いがけない出来事(台風での被害、単価の暴落、子どもから肺炎をもらい入院、豪雪による施設の倒壊・・・)で収入減になる現実。されど経験と技術の積み上げが所得につながる事実など。

20年間を通して目指すところは変わらないものの、それを達成する手段(営農形態や働き方)や最終目的が変わってきたことを紹介。
■所得を得る(売り上げを上げる → 収益の確保/収益構造の見直し)
■高効率化 (所得を上げる   → 時間を作る)

4.まとめ・・・ 考えて欲しいこと

■自分にとっての[農業の価値]とは何か
■営農における[リスク分散]の方法
■[収入減への備え]
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「人に伝える」ということは、それ以上の学びや気づきがあるもの。講師を引き受けたことで新規就農してからの20年を振り返ることができ、私たち家族が大切にしてきたものは何か、どうやって課題を解決してきたのかなどを改めて分析することができました。

講義終了後、ある研修生が私に
「先生の講義や研修生仲間と話して気づいたことがあります。世の中には様々な技術や資材があるけれど、それらは基本であって正解じゃない。コーディネートして自分の農業にしていく(新しく作り上げる)ことが大事なんですね。それを選択できるようになるために、技術や知識を学ぶことと、チャレンジして経験を積んでいくことが大事。ああそうかって、解りました。」
彼のキラキラした眼が印象的でした。

そう、農業をしていると上手くいかないことも多くて、生活も苦しくなって、どうしようかと途方に暮れることもあるんです。でも、少し先を見て、しぶとく生き残り続けることが何よりも大事だと思います。苦境に耐え、継続することで力が付きます。

どうかたくさんの新規就農者が、自分の農業を確立して、農業者として自立できる日が来ますように。

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