2015年03月21日

条例制定には時期尚早と考え反対するも、賛成多数で原案可決。【平成27年第1回定例会/月形町子どものいじめ防止条例】

平成27年第1回定例会の報告として、まずは『月形町子どものいじめ防止条例』についてです。
この条例は今定例会で可決成立したので、平成27年4月1日から施行されます。

しかしながら、私はこの条例の制定に反対しました(結果は反対1:賛成8の賛成多数で原案可決)。反対にはいくつかの理由がありますが、最も大きな理由は「議論が尽くされていない=時期尚早」というもの。まずは私の反対討論(要旨)、その後に条例構成と審議時の質疑応答、そして最後に私の考えを記します。

ちょっと長いのですが、興味の持てる部分だけでも読んでいただけたら幸いです。
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【反対討論(要旨)】
 いじめ問題(防止策と対策)は社会的に関心が高い上に、保護者にとっては子どもを育てる際のセーフティーネットとして、行政に積極的に取り組んで欲しい項目の一つとなっている。
 今回、月形町子どものいじめ防止条例の審議過程で明らかになったのは、この条例を実効性のある有意義なものにするには議論が不十分であり、条例化するには時期尚早ということ。

 具体的には、この条例の制定によって町や教育委員会、学校、保護者に責務が課せられているだけでなく、町民や事業者も役割を担うことになるにもかかわらず、現在までこの条例の情報が何も提供されず、説明も議論も全く行われていない。加えて、このいじめ防止条例の直接的な当事者である子どもたちについて言えば、この条文ではほとんど触れられていない。
 さらに、この条例には「いじめの禁止」という条文がある。過去に起きた陰惨ないじめの反省から導き出された考え方として「いじめはどこにでもあり、誰でも関わる可能性がある。それを早期に発見し対処することこそ重要」という基本的な姿勢を、この「いじめの禁止」という条文が阻害することになるのではないかと危惧する。

 これらのことから、私は月形町いじめ防止条例の今定例会での制定は時期尚早と考える。これから子どもたちや町民に説明を行い、充分な議論や周知の後に再度手続きをとって制定することが望ましいと判断し、今回は反対する。
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【なぜ今、条例を制定するのか?】
平成25年に国が『いじめ対策推進法』を制定、それを受けて北海道は平成26年『北海道いじめの防止等に関する条例』(平成26年4月1日施行)を制定した。そして平成27年は基礎自治体が同様の条例を制定するという流れがあり、月形町も今定例会に提案し、4月1日施行をめざす。(教育長答弁より)

【月形町子どものいじめ防止条例の構成】国の法律を基本にしているようです。
■目的(第1条)/用語の定義(第2条)/基本理念(第3条)/いじめの禁止(第4条)/町および教育委員会の責務(第5条)/学校の責務(第6条)/保護者の責務等(第7条)/町民および事業者の役割(第8条)/財政上の措置(第9条)
■道との連携等(第10条)/いじめ防止基本方針の策定等(第11条)/学校のいじめ防止基本方針の策定等(第12条)/いじめ問題対策連絡協議会(第13条)/いじめ対策委員会(第14条)
■学校におけるいじめの防止(第15条)/いじめの早期発見のための措置(第16条)/学校評価等における留意事項(第17条)/啓発活動(第18条)
■学校におけるいじめ防止等の対策のための組織(第19条)/いじめの対する措置(第20条)/教育委員会による措置(第21条)/校長および教職員による懲戒、出席停止(第22条)/出席停止制度の適切な運用等(第23条)
■学校による対処(第24条)/教育委員会による対処(第25条)/町長による対処(第26条)
■委任(第27条)

【質疑応答】・・・聴き書きなので発言趣旨のみ一部掲載。
Q 第2条では「いじめ」を「子どもが、一定の人間的関係にある他の子どもから、心理的または物理的な攻撃(インターネット等を通じて行われるものを含む。)を受けたことにより、心身の苦痛を感じているものをいう。」と定義している。
これまで教育委員会のいじめ実態調査で「“ちょっかい”や“からかい”はあったものの、いじめはなかった。」と報告している。「いじめ」の基準はどうなるのか?
A いじめの基準は、いじめられた子どもの立場に立って判断する。“ちょっかい”や“からかい”は「一過性のいじめ」と受け止め、その行為が継続するかどうか調査する。

Q 第4条(いじめの禁止)では「子どもは、互いに思いやり、ともに支え合い、いかなる理由があってもいじめを行ってはならない。」と規定している。「いじめの禁止」とうたうことによって、現場はいじめを隠す方向にならないか? いじめの禁止として条項を設けるのではなく、基本理念として盛り込むべきではないか?
A 法にも規定されていること。この条例には必要な項目。

Q この条例には、町や教育委員会、学校、保護者には責務が、町民や事業者には役割が課せられている。しかし当事者である子どもの役割はない。この条例は、子どもが「いじめがあった」と言わなければ動き出さない仕組みなのに、子どもに役割がないのは疑問。子どもの役割として、いじめを受けたら○○(関係機関等)に相談するなどの規定があってもいいのでは?
A 「いじめを受けた場合」という条項を載せている自治体もあるが、第4条で子どもの役割を言い表していると考える。いじめがあった場合など、先生方がアンテナを高くしてやっていくことで対処できる。

Q なぜ今、条例を制定しなければならないのか? 
A 国は平成25年、道が平成26年に制定した。この流れで平成27年度に制定したい。
Q 私(議会)は、この定例会で初めてこの条例が制定されることを知った。町民には何の情報提供も議論もないままに条例が制定されるのか? 実効性がないのでは? 
平成27年度中に条例を制定したいのであれば何も急ぐことはない。議論を重ねてから提案しても今年度中に制定できる。
A より早く条例を制定して「いじめ防止」の効果を出していきたい。

Q 「いじめ問題対策連絡協議会」の内容とメンバーと人数は?
A 主に未然防止対策をするための組織。各小中学校長やPTA会長、PTA連合会、民生委員主任児童委員、人権擁護委員、警察、児童相談所など、10名で構成。
Q 「いじめ対策委員会」の内容とメンバーと人数は?
A いじめが起きた際の調査と分析、諮問などを、教育委員会とともに行う。学識経験者とスクールカウンセラーなど、5名で構成。
Q 予算措置されているのは、どちらの組織とも半日の会議2回分。組織を立ち上げるだけで1回の会議は終了してしまう。防止対策や方針など実質的な活動が1回でできるのか?
A 2回で足りなければ補正を組んで実施する。
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「月形町子どものいじめ防止条例」の審議内容の要約を掲載しました。こうしてまとめると話の筋が通っているような印象を受けるかもしれません。しかし実態は答弁に一貫性がなく、ちぐはぐな感じでした(上記の内容は条例2本と予算審議の計3ヶ所の議論を整理して掲載しています)。担当者の中でも充分が議論がなされないまま、条文・条例だけが独り歩きをしているような印象です。

子を持つ親として「いじめ」は重大事項です。私も子育て中には相当に向き合い、悩み苦しんだ経験があります。その時に支えになってくれたのは、いじめを真剣に捉えてくれた先生や友人やスクールカウンセラーのみなさんでした。膨大なエネルギーと時間を費やして向き合ったからこそ光が見えたと感じています。人の奥底の感情に関係することだからこそ、関係者間のコミュニケーションと信頼と専門性が何よりも大事だと思います。

いじめ防止を条例化し組織として取り組もうとすることに異議はありません。ただ、この条例が「絵に描いた餅」となることだけは避けたい。かえって良心的な動きを阻害することになるからです。だからこそ、もっと周知と認識を広めるような議論が必要だと考えました。その心配が杞憂に終われば、それはそれで良しです。

条例は制定されました。
どうか積極的な展開がなされますように。

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