2010年05月24日

2010年度 北海道自治体学会 政策シンポジウム(研究・政策スタジアム)

2010年度・北海道自治体学会・政策シンポジウムの詳細です。

(右の写真は本文とは関係ありませんが、シンポジウム当日の北海道庁旧本庁舎(赤れんが庁舎)です。会場に向かう途中あまりにきれいなのでパチリ。満開の八重桜の木の下で撮影したので、ほんの少しシルエットで写り込んでいます。敷地内は中国人観光客で賑わっていました。)

研究・政策スタジアムは、地方自治に関する研究の成果や提言を行う発表者と参加者とが、意見交換を通して発想を触発し合うことを目的にしています。

3者の発表内容のうち、私が月形町にも関連する(応用できる)と考える部分を紹介します。
__。__。__。__。__。__。__。__。__。


発表1.本田裕孝氏(札幌市役所財政局工事管理室室長) 「水道事業の官民連携を考える」

◆日本の水道事業が抱える課題
・料金収入の低迷(人口減や高齢化による使用料の減少)
・老朽化した施設の更新・再構築
 (普及率は既に98%。延伸による増収の幅はなく、更新にかかる費用は料金収入から)

◆官民連携のポイント
・公共サービスの効率化
・サービスの質の向上
・ビジネスチャンスの創出

◆水道にはしっかりした経営理念(安全・安定・継続)が求められる
・水道事業全てを民営化した事例は極少。むしろ民→官の動きが強い
・水道事業で官民連携をするとすれば、経営権・財産権は官が保持(最終責任を負うべき)

◆質疑応答、意見交換から
Q 独居(高齢者、若年単身者)世帯の使用量は基本水量以下になっている。
  公益性・公平性の観点から最低料金の見直しは考えられないだろうか?
A 老朽化施設の更新には料金収入しかない。かかる費用の応分負担を考えると料金増となる。
  料金体系全体の見直しが必要では。

Q 水道は、地域の水循環の観点から広域な視点や対応が必要ではないか?
A 今後の研究課題。
__。__。__。__。__。__。__。__。__。


発表2.
 渡辺まどか氏(北海道工業大学非常勤講師、通訳者、北海学園大学法学研究科博士後期課程)
  「スウェーデンにおける高齢者福祉における質の確保について
           〜ストックホルム市高齢者ケア査察官の報告書を中心に〜」

◆ストックホルム市(スウェーデン)の高齢者福祉の状況
・高齢者ケアの積極的な民営化
 (ストックホルム市の場合、約半分は民間。NPOや株式会社が担っている。)
 (スウェーデン全体では約15%が民営化されている)
・民間に移行したことで、質のバラツキが発生、顕著に(高齢者虐待も増加)
・ストックホルム市による高齢者ケア査察官の任命
 (多用な活動に参加し、書類等もチェック。評価をネット等で公表し、改善をうながす)

◆スウェーデンにおける高齢者ケアの特徴
・生活の質の向上(外出も目標の1つ)
・利用者の満足度重視
・家族や親族へのサポート充実
 (今まで施設ケアに向いていたが、財政難により[家族・親族によるケア]に目が向く。
  スウェーデンも、もともとは家族や親族がケアに関わってきた。)  
・連続性・継続性の重視・・・ケアする人が変わることは高齢者の負担となる
・最低人員配置率がない・・・決めてしまうと配置率(下限)に合わせ、質が低下する

◆高齢者ケア査察官制度の限界と課題
・高齢者ケア査察官によって透明性や公開性は確保されるも、全てをカバーしきれない
 (特に規模の小さい民営事業所等。)
・民営化が進展すれば不可視部分が増え、虐待の増加や労働者へのしわ寄せの可能性がでてくる
_。__。__。__。__。__。__。__。__。


発表3.林かづき氏(江別市議会議員)   「江別市土地開発公社の考察と動向」

◆キーワード
・地価と簿価
・長期保有地解消事業
・自治体による土地の債務保障問題
・第三セクター等改革推進債(公社等の解散が条件。平成21年から5カ年)

◆質疑応答、意見交換
・不採算の土地は自治体内にはたくさんある。債務問題を議論しても発展性はない。
・使われるはずの土地が使われなかったことが問題。なぜ利用(使用)できなくなったのか。
・土地問題は奥が深い。区画整理の問題も含め研究の必要あるのでは。 

comments

ゆみこさん、私の発表内容まで載せてくださり、本当に有難うございます。ゆみこさんの発表で、私は、本当に影響を受けました。父母にも話しましたら、「それはすばらしい」と言っていました。

ところで、上記の内容で、2点ほど、誤解して取られてしまったカナと言う点があります。お配りしたレジュメには書いてあるのですが、「高齢者ケアの積極的な民営化(約半分は民間。NPOや株式会社が担っている)」という部分です。スウェーデン全体で約半分が民間」ではなく、「ストックホルム市の高齢者ケアでは約半分が民間」だということです。「スウェーデン全体では15%ほどが民営化されている」です。恐れ入りますが、ゆみこさんのこのブログはたくさんの人が見ると思いますので、どうか、修正して置いてくだされば幸いです。^^

もう一点もレジュメに書いておいたのですが、「各自治体による高齢者ケア査察官の任命」とゆみこさんが書いてくださったところです。正しくは、「ストックホルム市による高齢者ケア査察官の任命」です。各自治体でそれぞれの政策の工夫をしています。高齢者ケア査察官という名前の査察官を置いているところはストックホルム市他数市です。よろしくお願いいたします。

自分としては、民営化について焦点を当てるつもりはなく、スウェーデン全体の高齢者ケアにおける驚くべき情報公開、透明性に焦点を当てるつもりだったのですが、前の発表をされた方が民営化のことを話されたので、私も聞いていた方々もその点に注意が行きがちだったかもしれません。

それにしても、私にとっては、とても勉強になり、刺激になった一日でした。^^

  • 渡辺まどか
  • 2010年05月28日 20:12

  •     

まどかさん、コメントありがとうございます。

ご指摘いただいた点は本文修正いたしました。

帰宅後、レジュメとその場でとったメモとを見比べながら内容をまとめていくのですが、十分に把握(理解)できていない所があって、迷いながら記してしまっていました。間違って周知されることの方が問題なので、こうして指摘していただけると本当に助かります。ありがとうございました。

今回のまどかさんの発表で「高齢者ケア査察官」には驚きましたが、それ以上に興味を持ったのは以下の3点です。
■民間に移行したことで質のバラツキが発生、顕著に(高齢者虐待も増加)
■家族や親族へのサポート充実
 (今まで施設ケアに向いていたが、財政難により[家族・親族によるケア]に目が向く。
  スウェーデンも、もともとは家族や親族がケアに関わってきた。)
■連続性・継続性の重視・・・ケアする人が変わることは高齢者の負担となる

現在の日本の高齢者政策が数年後(あるいは間もなく)行き着くであろう問題点を現していると感じました。その解決策として「原点回帰」「透明性の確保」の政策をとっていることも知ることができ、今後のストックホルム市やスウェーデンの高齢者ケアをもっと知りたいと思いました。

私の場合、北欧といえば「フィンランド」の情報が多く、スウェーデンにはあまり触れる機会がありませんでしたが、まどかさんの発表をきっかけにより多く情報を収集していきたいと思います。

まどかさんの今後のご活躍を楽しみにしています。情報発信、よろしくお願いします。

  • 宮下ゆみこ
  • 2010年05月28日 20:44

  •     

コメント・フォーム

(ゆみこの日記 にはじめてコメントされる場合、不適切なコメントを防止するため、掲載前に管理者が内容を確認しています。適切なコメントと判断した場合コメントは直ちに表示されますので、再度コメントを投稿する必要はありません。)

コメント・フォーム

▲TOPへ戻る