2010年12月04日

廃棄物資源循環学会北海道支部セミナー(平成22年度)

12月4日(土)午後、北海道大学工学部オープンホールで、今年度の廃棄物資源循環学会北海道支部セミナーが開催されました。今年は事例発表も多岐に渡り数多くあった他、口蹄疫に関する特別講演もあり、例年より広い会場には各方面から120名もの参加者がありました。

ここで全てを紹介出来ませんが、いずれも大変興味深い内容でした。

「廃棄物は資源」という考え方を持って、様々な素材(廃棄物)を経済性のあるモノに変えていこうとするエネルギーがこの廃棄物循環学会にはあります。その考え方で実社会を見ていくと、実に多くの事象が「廃棄物」で繋がり、「業界」「専門」「縦割り」など狭い範疇でおさまりきらない「廃棄物」の姿が見えてきました。
視点と発想が重要、そしてなんと言っても経済性(補助金などの政策投資も含めて経済活動として成り立つのか。環境負荷など将来的な負担も含めた経済性)が鍵になると感じました。

会場で久しぶりに松田從三先生(現ホクレン農業研究所)とお会いし、情報交換させていただきました。松田先生とは月形町内での講演会がご縁で、NEDOの新エネビジョンや一般廃棄物処理の関係でもお世話になりました。専門家の視点や知識は大きな力になります。

以下、プログラム(目次のみ・発表者の氏名省略)と、私の視点での特別講演内容を記します。
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平成22年度 廃棄物資源循環学会北海道支部セミナー
    『北海道における発生抑制・資源循環・廃棄物処理に関する取り組み紹介』

1-01 「北海道グリーン・ビズ認定制度」            北海道環境生活部環境局
1-02 「廃石膏ボードのグラウンド用ライン引き粉としての再生・OEMによる販売」
                                   北清企業株式会社
1-03 「環境と経営の両立、森林保護と廃棄物ゼロへの取り組み」     道栄紙業株式会社
1-04 「北洋大通りセンター新築工事のゼロエミッション化」
     大林・伊藤・岩田地崎・丸彦渡辺・中山・田中共同企業体 北洋大通りJV工事事務所

2-01 「医療廃棄物のリサイクル処理」      空知興産株式会社苫東リサイクルセンター
2-02 「地域環境に配慮した最終処分場計画と跡地利用」         角山開発株式会社
2-03 「北海道における海岸漂着物実態調査」              株式会社ドーコン
2-04 「バイオマス亜臨海肥料化技術研究開発について」
                   (社)日本技術士会北海道支部資源・環境・健康分科会
              (独)北海道農業研究センター・(株)ピーシーエス他道内6企業
                         特定非営利活動法人北海道資源循環研究所

3-01 「ホタテ貝柱の堆肥化による資源化」について              枝幸町農林課
3-02 「廃石こう品リサイクル事業化WGの活動報告」 廃石こう品リサイクル事業化WG事務局
3-03 「石炭灰利用人工海底マウンド技術と北海道における事業化可能性」 株式会社エコニクス
3-04 「資源循環型社会におけるセメント産業の動向」         日鐵セメント株式会社
3-05 「産業界のインフラを活用した可燃性廃棄物の化石燃料代替化」
                      広域北海道有機素材循環利用ネットワーク協議会
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特別講演『宮崎県の口蹄疫による家畜埋却処理と海外の事例』  
              宮崎大学工学部土木環境工学科 助教 関戸知雄氏

■口蹄疫とは
・口蹄疫そのもので死ぬのではなく、家畜の価値が下がることが問題
・様々な型(type)が存在し、相互にワクチンが効かない。抗原は著しく多様。容易に変異。
・酸性またはアルカリ性に振ることで防除できる
  例:低温条件 pH7.0〜9.0で安定。pH4で15秒間、pH6で2分間で死滅
・現段階の口蹄疫対策や対応は、経験的にやっていかなければならない状況。研究途上。

■口蹄疫防疫措置の実態
・マニュアルでは「異常家畜が疑似家畜と決定後原則として24時間以内に殺処分。
     ↓               疑似患畜と判定後72時間以内に埋却を完了」
  現場では時間的余裕がなく、不眠不休で対応しなければならなかった。
  今後、大規模農家は埋却方法まで考えて営農するようになる。
        (宮崎の集約的営農ならではの問題)

・焼却処理は時間的な問題でできなかった。
  また、発生地が住宅地と隣接しているので、家畜を動かすリスクを考え埋却処分した。
・当初、法律だけでは防ぎきれず。
  新たな対処[半径10km圏内の家畜全島にワクチン接種
                  →殺処分]で終息した
・感染ルートは現在調査中
・埋設方法は試行錯誤の末にたどり着いたもの(右図)

■埋却により発生した問題
・悪臭
・体液の噴出
 (シートの隙間から地上に噴出。雨などの自然圧もある)
・礫による農地の荒廃(埋却のはほとんどが自前の農地。深さ4mも掘り返すことで礫が出てくる。
           それを短時間でうめ戻すため、上下転地され良質な表土がない状態)
・3年は発掘禁止(法律による)
・環境汚染への不安(ガスや汚水の問題 → モニタリング実施中)
・多量の石灰散布による粉じんと臭い
 (一般人では2、3日間の作業後には休まざるを得ない状況になる)

■イギリスの事例
・2001年発生、約600万頭を殺処分、主に羊
・家畜、トラック、人の異動によって伝搬。風による伝搬も確認されている。
・約30%は焼却された(多くは野積み焼却)
・結果的に大規模な環境汚染はなかったのではないか
 (文献等あたってもあまり資料が見あたらない。現在も調査中)
・埋め立て地からの浸出液調査で、
  COD(化学的酸素要求量、水質の指標の1つ)は急速に濃度が減少。
  アンモニア態窒素は、5年経過しても濃度が上昇したまま → 長期化の可能性
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この特別講演で「現場」を知ることができました。
当時の報道やインターネット情報で、現地の悲惨さや非常さを多少なりとも知っていたつもりでしたが、現場そのままの声は響きました。画面や紙面からは「臭い」は解りませんし、本当の惨状も写してなかったのは当然でしょう。その中で、いかに現実の課題を想像できるか・・・その手だてとなる情報が盛りだくさんで、貴重なお話でした。ありがとうございました。

口蹄疫の惨事は二度と起こしてはならないと、あの時も、今も思っています。ただ感染ルートが未だ解明されていないことや、アジア大陸でまたも発生したこと、現状では有効な手だてが確立されていないことなど、研究途上であることが不安の種ですが、同時に研究が日夜進められているのもわかりました。

行政の役割として、今回の経験とこれからの研究成果を生かし、いつ非常事態が起きても対処できるような体制作りが求められるでしょう。これは宮崎県下だけの問題ではなく、北海道や月形町にも当てはまります。そのためにはまず今回の行動検証が重要ではないでしょうか。
どんな問題もツボは一緒の様な気がします。

関係者の方々、研究者の皆さん、今も日夜努力されていることでしょう。
どうかよろしくお願いします。

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