2011年01月21日

北海道中小企業家同友会南空知支部 2011年新年交礼会

昨晩(1月20日)岩見沢市ホテルサンプラザにて開催された「一般財団法人北海道中小企業家同友会南空知支部 2011年新春講演&新年交礼会」に参加してきました。初めて中小企業家同友会に参加させていただいたのは2010年の新年交礼会、ちょうど1年が経ったことになります。

今年の新春講演の講師は、福岡県にある(資)若竹屋酒造場 14代目社長の林田浩暢氏。
社会経験を積んで自社に入社したときには債務超過の状況。会社を守るためには経常利益を出し、資金を調達しなければならない事態に。そこで、現場の実態を詳細に把握した上で様々な分析と実践を重ね、負債を減らしている現在進行形のお話です。

講演内容は経験談だけではなく、その裏にある経営改善の具体的手法や理論が熱く語られ、経営者として何をなすべきかが伝わってきました。また老舗の後継者であることによる家族の問題にも触れ、親近感と共感が湧きました。身につまされた会員の方もいたかもしれません。

林田さんが自ら学び、考え、行動した結果導いた一つ一つの言葉は、まるで魂を持ったように力強く私に入り込んできました。全てが正直であり、ブレる隙などない現実から生まれた言葉だからこその勢いなのだと思います。

以下に、私が記憶に留めておきたいと思った講演内容の一部を記します。
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『創業元禄12年、若竹屋は先祖より預かりしものにあらず・・・!
  〜挑戦!・・・「10年連続赤字・債務超過」からの脱出!〜

 講師:(資)若竹屋酒造場 14代目社長    林田浩暢氏


■入社時(約20年前)の酒業界の状況
・酒販店は免許制だったために、経営に革新のない状態。
 そこに量販店が進出してきた。
・酒販店の衰退にあわせ、蔵元(酒造業)である若竹屋の収益も落ちた。
・「買う気がない人に買わせる技術が営業」と営業セミナー等で教えられるも、商品は動かない。
・資本の違いにより、大手メーカーや量販店の攻勢に負ける。酒販店・酒造業とも追い込まれる。

■若竹屋の実情を知る(約15年前
・既に債務超過の状態。新規借り入れもできない=運転資金を自前で捻出しなければならない。
・利益が出ないのではなく、利益を出さない構造になっていた
・現場(製造、販売、管理)はマンネリ化、意識の低下が顕著

■会社存続に向けた取り組みの始まり
・細かい仕切書を全て見直し実態を把握、綿密な利益計画書(経営計画書)を作った。
 → 初年度僅かに黒字、翌年は黒字幅が大きく伸びる → 更なる経営改善(分析と行動)
・返済に必要な原資の確保が会社存続の絶対条件 = 経常利益の確保 → 下から作る計画

■下から作る計画=必要な経常利益を算出し、そこから固定費や変動費、売り上げを検討していく
・経常利益:返済の原資、将来展望【会社のビジョン】
・固定費 :会社内部の改善で賄えるもの【自助努力】
・変動費(製造原価など):対外的な交渉が必要。お願い。5カ年計画や見通しを語り理解を求める
             【他社との関係性。ビジョンの共有】
・売上げ :お客様が決めること。商品、顧客、地域、流通、営業など様々な要素の影響の結果
◎経営計画書には「会社にかかわるそれぞれのストーリー」が、数字という形を取って現れてくる

■経営改善で見えてきたもの
・企業理念は重要。しかし後継者にとって理念を創出するのは難しい。
 (創業者はやりたいことがあって起業した=理念がある。引き継いだ者との立場の違い)
・まずは「経営計画書(利益計画書)」。実施していくうちに理念や方針が見えてきた。
・理念が浸透していない会社は利益が出ない。
・理念や方針を浸透させたいなら、利益を出すことが最速の方法。

■経営者のやるべきこと
◎経営資源(人・物・金+情報・技術・他)をどこに投入すれば良いのかの決断
         = 会社の強みを活かすところに資源を投入すること
◎何かを削る決断 = 経営資源を捻出すること

■分析手法の活用
◎様々な分析法は決断の根拠、支援になる
◎分析過程・結果を共有することで社内の一体感が醸成 → 理念の浸透、経営方針の確立
・SWOT分析:強みと弱み(内部環境)、ピンチとチャンス(外部環境)を分析
・ABC分析 :何を削るかの指針
・移動年計 :分析対象(商品、顧客等)の状態の把握。変化の理由を分析することで活用。
・ポートフォリオ分析(またはPPM分析):2つの要素(若竹屋の場合は粗利率と売上高)を軸に
       分析対象のゾーン分け。ライフサイクルに当てはまる。資源投資先決定に活用。
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非常に明解で論理的かつ実践的なお話は、大変良質な経営セミナーでした。林田さんが精魂込めて発した言葉(エネルギー)を生きた資源としていかに活かすかが、参加者(経営者)の手腕や器量のような気がします。

これを(予算以外の)自治体経営に応用すると・・・
[経常利益:住民から信頼][固定費:職員のやる気・倫理・行動][変動費:経済状況、社会情勢、国や道からの予算配分、制度変更][売上げ:住民のニーズへの対応・・・]
求めるものも扱うものも数字に換算できないので、ちょっと考えたくらいでは答の出せるものではありませんね。

しかし行政改革の手法としてSWOT分析やABC分析、ポートフォリオ分析は活用できそうです(相当の発想と視点の転換は必要ですが)。またそれらを試行錯誤し検討する中で、行政内の理念も高まり浸透することでしょう。

講師の林田さんも債務超過というピンチに向き合い立ち向かったからこそ、社内の一体感や活力、関係業者や顧客との信頼関係、家族への理解などの結果がついてきたのだと思います。

ピンチはチャンス!  私は当事者です。自ら飛び込んで答えを導き、実践!

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