2019年07月29日

面白かった!【議会技術研究会フォーラム2019「私はなぜ議員になったのか」】

7月27日(土)に札幌で開催された「議会技術研究会フォーラム2019」に参加してきました。主催は北海道地方自治研究所と北海道自治体学会・議会技術研究会。(2019年7月28日の北海道新聞朝刊に紹介記事)
 
テーマは「私はなぜ議員になったのか」。フォーラムのメインは5人の新人議員(補欠選挙や春の統一地方選挙で議員になったばかりの市議3人町議2人)。立候補に至った経緯を中心に語りました。5人はともに議会や政治とは関係ない普通の暮らしの中から、それぞれのきっかけを得て議員になった人たちです。
 
・遠藤友宇子議員(雄武町議会)
・碧ひろみ議員 (札幌市議会)
・佐々木百合香議員(北広島市議会)
・新岡ちかえ議員(恵庭市議会)
・沼尾昌也議員 (浦幌町議会)
 

登壇された新人議員のみなさんは話の内容も伝え方もそれぞれに個性があり、それがまさしく「議員」の原点だと改めて気づかせてくれました。「議員」は多様な住民から選出(輩出)されるのだから、本来個性的で多様なはず。なのに現実には、画一した思考と行動様式を持った「ザ・議員」にに変質してしまう。その変質する鍵は何か? どうすれば防げるのか? と、問いかけられているように感じました。
 
議会に入って初心を貫き通すのがどれほど難しいか・・・
言い換えると、初心が明確でなければ自身の変質にも気づかない。そんなことも感じました。
 
フォーラムの最初、基調提起「議会が変わればまちが変わる」の中で橋場利勝・元栗山町議会議長は、議員としての夢や希望と同じように、議員としての職責があることを伝えてくれました。
 
橋場元議長のお話から私の中でイメージが膨らみ、浮かんだのは「議決の重み」。議員になると新人も数期目議員も採決時は同じ1票。審議内容を理解できているかいないかに関わらず、採決に参加し意思表示しなくてはなりません。その結果が「まちの未来」を決めていく・・・そういう役割を議員は担っているということも自覚する必要がありますね。
 
 
議会技術研究会フォーラム2019、新しい切り口で面白かったです!

2019年07月23日

参議院議員選挙が終わって思うこと【第25回参議院議員選挙】

国政選挙があったのか?と思うほど、状況も気持ちも変化がないのは初めて。自分が歳を重ねてからなのか? 世間が言うように「盛り上がらない選挙」だったからなのか? それにしても投票率の低さには驚いたし、これが現実かと思うとガックシ・・・
 
と言っても、思うこともあったので書き残しておこう。
 
■午後8時すぐに3議席とも当確なんて!
北海道選挙区は定数3。選挙終盤「上位2人(元知事のはるみさん、立憲の勝部さん)は当確、3議席目が自民か共産か」みたいな報道だったのに、開票開始時刻すぐに自民の岩本さんにも当確。もう終わり!? すっかり興味を失ってしまった。
報道機関が一生懸命調査したその仕事の結果なんだけれど、こんなことを見せつけられると自分の1票の重みを感じられない。結局、サンプル調査で充分じゃないかと擦り込まれているよう。
選挙をしたら開票して票数を確定しなくちゃならないんだから、開票作業に従事する人に敬意を払って待てないものなのか・・・ 報道関係者も働き方改革! 余計なことをしなくてもいいよ。
 
 
■参議院議員選挙の複雑さ
参議院議員選挙は複雑すぎる! 特に比例区は本当に複雑で何とかならないか。投票所記帳台に貼られた候補者リストは小さすぎて見えないくらい。狭い空間でクラクラしちゃった! 
■比例の個人得票と特定枠
比例区個人得票で最多99万票だった「れいわ」の山本太郎氏が落選するという現実。選挙の仕組みを活用した「れいわ」の作戦なのは解るけれど「山本太郎」と書いた有権者の想いを考えるとビミョー。
やっぱり、複雑な選挙制度は良くないと思った。
■選挙区と比例区
私は、参議院は専門家か当事者が議員になる方がイイと思っている。衆議院のカーボンコピーには断固反対。衆議院に落選した人や国政で仕事がしたいというだけの参議院議員では意味がないと思っている。
だけど、だけど、投票したい人に投票できない現実。意中の人が他の選挙区に立候補しているから。比例区だったら入れられるのに・・・
北海道選挙区の候補者はいつも衆議院と何ら変わらない人達。そこから選ぶとなると必然的に衆議院のときと同じ思考で選ぶしかなくなる。何だかんだ言っても、そうやって選んでしまう私自身に残念。
 
 
■「れいわ」の取り組み
れいわ新選組の勢いが都市部やネットを中心に広がっているのを知っていたけれど、必ずしも主張に共感できなかったので深掘りしていなかった。だけど、比例特定枠で当選された舩後さんと木村さんが、ASL患者と重度障害者で介助者を必要とするのを知って(今頃で恥ずかしいけれど)なるほどと納得した。新しい社会を切り拓くかもしれない。
1977年八代英太さんが初めて車椅子で登院した姿を覚えている(私は当時10歳)。当事者が議員になることでバリアフリー化が進んだ実例で、すごいニュースだったのを思い出した。

2019年07月18日

こんなことが起きていたなんて💢【街頭演説で、政権批判ヤジを警察が排除】

今朝ラジオから流れた「道新ニュース」を聴いて耳を疑ったけれど、朝刊で確認してビックリ‼️ 考えるほどに憤りが増して心臓がバクバクしてる。こんなことが起きてたなんて💢
 
街頭演説のときに、生声で政権批判のヤジを飛ばしたり意見を書いたプラカードを掲げることが制限される(今回は、さらに警察によって排除される)なんてことがあってはならない。絶対に‼️
 
こんな社会はおかしい
 
※ 写真は北海道新聞 2019年7月18日朝刊(1面と32面)。
この現実を知るために、どちらも読んでほしい。

首相にヤジの聴衆を道警が排除 札幌 専門家「表現の自由侵害」(北海道新聞/2019年7月18日朝刊1面)

道警の警察官らが札幌市中央区で15日に行われた安倍晋三首相の参院選街頭演説で、声を上げたりヤジを飛ばしたりした男女2人を現場から引き離したほか、政策に疑問を投げかけるプラカードを掲げようとした女性らを制止するなどした。市民を抑え込む警察の動きに対し、専門家は「表現の自由の侵害だ」などと批判を強めている。

 首相は15日午後4時40分ごろ、JR札幌駅前で約1200人(主催者発表)を前に演説を開始。間もなく選挙カーから道路を挟み、約20メートル離れた場所で「安倍辞めろ、帰れ」と叫んだ男性が私服や制服の警察官に腕や肩などをつかまれ、後方に移動させられた。その後「増税反対」と声を上げた女性も警察官に後ろから抱きかかえられるようにして引っ張られ、群衆から引き離された。2人とも拡声器などは使っていなかった。

 さらに、札幌三越前の演説会場では、市民団体が現行の年金制度を疑問視するプラカードを掲げようとしたが、取り囲んだ警察官に制止された。同じ会場で「安倍政権支持」のプラカードは多数掲げられていた。

 道警は「周囲で演説を聴取している方とのトラブルや犯罪を未然に防止するための措置」とコメント。その上で、声を上げた男女については「(公職選挙法が禁じる)選挙の自由妨害に当たるかは調査中」とし、プラカードの女性への対応には「制止した理由を確認中」としている。

 札幌三越前で演説を聞いた北星学園大の岩本一郎教授(憲法学)は「公共の場で市民が意見表明することは憲法21条の表現の自由に基づき、最大限認められなければならない。今回は明らかに警察の越権行為で許されない」と指摘する。



2019年06月28日

審議会傍聴&住民説明会参加【令和元年第1回月形町地域拠点施設整備等審議会&住民説明会】

昨晩開催された標題の審議会(←バスターミナル複合施設整備の関係)を傍聴し、つづく住民説明会も参加してきました。以下、報告と所感です。
 
■審議会

・初めて開催された審議会は、委員委嘱(任期2年)と審議内容説明で終了し、本格的な議論は次回から。
・委員は20名(町内公共団体・関係機関から14名、識者4名、公募2名)うち女性は7人。
・会議や議事録は公開
・スケジュール 
 2019年6月 第1回(←ココ)
 7月後半頃 第2回(現地で状況把握後、会議)
 8月〜9月 道内外を先進地視察
 10月   第3回 素案づくり(審議会回数増もあり)
(11月 可能であれば町政懇談会で町民に説明)
 12月   第4回 方針決定(審議会回数増もあり)
※2019年12月までに方針を決定したいが、審議状況によっては延長もある。ただし、遅くても2020年2月頃までに結論。
 
《所感》
今回の審議委員は顔ぶれが新鮮で、特に若手と女性が多くて好感と期待が高まります。審議内容が大型公共施設や公園の整備であり、生活者の視点が重要な上に将来的な負担にも関わることなので、何よりでした。さらに、審議会の福井会長が最後に「今日の説明を各自持ち帰り、各団体や家族の方などと話し合いをして、次回は意見を出し合いましょう」と呼びかけてくれました。活発で開かれた議論できる雰囲気にも期待を持ちました。
一方で、説明された資料には費用概算がほんの少し掲載されていただけで、財源や町財政状況には全く触れられていませんでした。夢を描く(方針を決定する)には、それを実現するための財政的裏付けは必須で、それを合わせてしっかり議論して欲しいと思いました。一般会計予算36億円ほどしかない自治体で、建設費だけで5億円程+α(土地取得など)+公園整備という大規模な事業の方針の決定なので。
もう一つ。スケジュールには改めて驚きました。半年でこのボリュームを審議し結論が出せるのか? 審議回数を増やせると言っても最長2ヶ月間の延長しか予定されていないのも不安です。期限に急かされず委員のみなさんが納得する議論ができることを、切に願っています。
 

■住民説明会(町主催)

・全町民対象に開催される町が主催の説明会。この時期に開催するのは今回1回のみ。以降は、審議会主催の意見交換会などが検討されている。
・参加者は町民約20人(うち議員3人)。候補地に住む住民の方が多かった。また、公共交通網形成計画策定時から継続して参加している人も。この他、オブザーバーとして審議委員8人が出席。
・説明内容は審議会のときに行ったものとほぼ同じ。
・配布資料は概要版で、審議会に配布した資料から費用等部分を割愛したもの。
・参加者から「よくわからない」「地域公共交通との関連性は?」「費用や財源はどうなっているのか?」「町長の方針が見えない」「この先どうなるか不安。現状課題や問題意識を示した上で、その解決策としてこの事業があると説明して欲しい」「高齢者(弱者)の視点を大事にして欲しい」「町民の意見は多様だから審議会委員や議員に委ねる」等の質問や意見が出ていました。
 
《所感》
これまで町は、事業や方針がほぼ決定した段階で住民説明会を開いてきたため、参加した町民の多くが「決定事項の説明を受ける場」という認識だったかもしれません。今回はスタート段階だという説明が十分でなく(町側は説明したつもりだと思うけれど、最も大事なこの部分を強調していなかったので)町民には届いていないと感じました。
また、町側は「以前から計画を策定したり、アンケートを採ったりと段階を踏んで進めてきた」と説明しましたが、町民側にすれば、昨年同じような名称の似たようなアンケートが何度もあり、よくわからないままに進んでいる印象。町側と町民側との意識の開きが大きいと感じました。この部分、議会も絡んで上手く持っていけないものか・・・
副議長と常任委員長も参加していたので、議会でも議論できればと思います。

2019年06月23日

こんな説明を受けたい、したい【谷畑市長の提案理由説明】

滋賀県湖南市・谷畑市長の「湖南市東庁舎建て替え・湖南市複合庁舎整備基本設計の是非を問う住民投票条例の制定についての提案理由」のノートです。

有権者から直接請求を受けて提案される条例は、市長が議会に提案する義務があります。ただ、その内容に食い違いがあるということで市長が「反対」の意見を付けて提案しました。その説明が以下に書かれています。

・説明を尽くす
・論点を整理し、主張を明確にする

こういう風に説明されたら理解が進み納得するでしょうし、納得できなくても次の建設的な展開に繫がると思います。こういう説明が議場で行われていることに感銘を受けました。

私も自身の意見を表明するときは、谷畑市長のように丁寧に明確に、参考にしたいと思ってシェアしました。

湖南市東庁舎建て替え・湖南市複合庁舎整備基本設計の是非を問う住民投票条例の制定についての提案理由/谷畑英吾·2019年6月21日金曜日

令和元年6月7日の湖南市議会6月定例会初日に、有権者から直接請求を受けて提案した「 湖南市東庁舎建て替え・湖南市複合庁舎整備基本設計の是非を問う住民投票条例の制定について 」の提案理由の説明です。

地方自治法上、有効署名数をもって請求された条例案については、長が議会に提案する義務があります。その際には長の意見を付して提案することになりますが、今回は「反対」の意見を付して提案しました。
それは、一般的に住民投票全てについて反対しているものではなく、提案された条例案の内容が不備であることに尽きます。その不備を議会で修正しようとすることは署名者に対する無責任であることも指摘しました。

また、これまで議会制民主主義のなかでていねいに合意を重ねてきたものを、最後の段階になって議員が率先して崩すことになるとすれば、今後、議会の決定に信頼を置けなくなる懸念があったためです。

「執行部としては引き続き複合庁舎整備事業につきましては、長期的な視点から市民のみなさんのご意見や社会経済情勢の変化をしっかりと捉え、悩みながら検討を続けてまいる所存であり、議会における代議制の熟議にも大きく期待する」
そう提案理由の最後の部分で述べたように、今も執行部としては「悩みながら」取り組んでいますし、議会の熟議による意思決定に「大きく期待」しているところでもあります。ご一読いただければ幸いです。

《それでは、議案第44号の提案理由をご説明申し上げます。
 議案第44号「湖南市東庁舎建て替え・湖南市複合庁舎整備基本設計の是非を問う住民投票条例の制定について」は、地方自治法第74条第1項の規定により、選挙権を有する者の50分の1以上の者の連署をもってその代表者から条例制定の請求が行われたことから、同条第3項の規定により意見を付して議会の議決を求めるものであります。
 本条例の制定につきまして、反対する立場から意見を申し上げます。

 まず、湖南市東庁舎建て替え・湖南市複合庁舎整備基本設計の是非を問う住民投票条例制定の請求の要旨には、基本計画策定時のタウンミーティング、基本設計策定時の市民説明会、および両パブリックコメント等について、「参加者数は、いずれも大変少ないものでした。」とありますが、説明会等の開催にあたっては、「広報こなん」、市ホームページ、組回覧、タウンメールなど利用できる媒体を可能な限り活用しながら周知を図って参加の機会を確保してまいりました。また、参加していただけなかった市民の皆様にも内容を知っていただくため、その都度、「広報こなん」、市ホームページなどで結果を掲載してきたところであります。

 平成29年7月には市内4か所でタウンミーティングを行い、湖南市公共施設等総合管理計画および庁舎整備の必要性や概要について、ご参加いただいた延べ207人の市民の皆様と意見交換を行いました。タウンミーティングに参加していただけなかった市民の皆様にも庁舎整備事業を知っていただくため、翌月の「広報こなん」8月号で特集記事を掲載し、市ホームページにはタウンミーティングの資料や、各会場で行った意見交換の内容を掲載しました。

 また、市民の皆様のご意見をこの基本計画に反映するため、素案の段階でパブリックコメントを実施し、市民の皆様のご意見を伺った上で策定を行ったところでもあります。

 基本計画の内容は、市ホームページおよび「広報こなん」1月号に掲載するとともに、湖南市区長会で報告をさせていただき、さらに基本計画の概要版を各区の組回覧により市民の皆様に周知をさせていただきました。

 平成30年度からは基本設計業務に着手し、市民目線での庁舎整備となるよう、市の各種団体や公募市民の方に参加していただき、湖南市複合庁舎整備市民ワークショップを3回開催し、基本設計にはワークショップでいただいたご意見を反映したところです。また、各回のワークショップの内容は、その都度、市ホームページに掲載し、公開してまいりました。

 基本設計(案)のパブリックコメントの実施期間中には、市民の皆様からご意見がいただきやすくなるよう、基本設計に係る市民説明会を、7つのまちづくり協議会単位で実施し、延べ190人の方にご参加いただき、市民の皆様との意見交換を行ってまいりました。

 説明会の開催にあたっては、市ホームページをはじめ、組回覧による周知を行い、タウンメールでは計3回にわたり開催のお知らせを行いました。さらに、報道機関に対しても資料提供を行い、市民説明会の開催についての記事を新聞に掲載していただきました。

 各会場での意見交換の内容につきましても、市ホームページに掲載し、参加していただけなかった皆様にも情報を提供しております。

 7か所の会場では、毎回同じ顔触れの方がお見えになり、毎回同じ質問を繰り返されましたので、発言を遮ることなく7回とも毎回根気強くお伺いし、ていねいにご説明をさせていただきました。決して、ご意見を聴かなかったというものではなく、むしろ、ご意見については十分にお聴かせいただいたものと理解しております。それよりは、毎回同じ方々が同じ質問や意見ばかりで時間を独占しておられたため、その他の市民の皆様のお声を直接伺うことができなかったのではないかという忸怩たる思いはございます。

 そうした方も含め、パブリックコメントでは、25人の方からご意見をいただきましたので、そのご意見を反映した上で基本設計を策定いたしました。

 『東庁舎建て替え問題と湖南市政を考える会』が実施したアンケート調査では、約36%の人が「事業計画を知らない」とありますが、これは無作為抽出によるものではないことから注意が必要であると考えます。

 しかしながら、住民投票条例制定の直接請求の署名には、法定数の873人を大きく上回る3,380人の有効署名があったことを真摯に受け止め、今後もさらなる市民の皆様への周知に努めてまいりたいと考えております。

 なお、参考までに申し上げますと、平成15年2月13日の第1回甲西町議会臨時会において、石部町・甲西町合併の是非を問う住民投票条例の制定についての提案に際して、当時の関治夫町長は、議会の承認を得て進んできた流れと信頼、審議を大事にすることが第一義であるとし、現行の間接民主主義の中で公平で透明に論議を進め、ひとりでも多くの町民に理解いただくためにフォーラム、タウンミーティング、意識調査を実施してきたという趣旨と現実の流れから、条例制定は適切でないとの意見を付しておりました。

 また、請求の要旨には、「『建て替え案』に対する『耐震補強・リフォーム案』や行政サービスの拠点の庁舎の在り方についての基本的議論も十分とは言えず」ともありますが、これらの件につきましては、基本構想段階から検討を重ねてきており、タウンミーティングや市民説明会などでも説明をさせていただいております。

 耐震補強工事は、建物の耐震性の向上を図ることはできますが、施設・設備の老朽化やバリアフリー化など、その他の課題を解決することが難しく、また、建物の寿命を延ばすものではないので、近い将来には庁舎の建替を行う必要があり、二重に経費がかかる懸念があります。平成28年に発生した熊本地震では、耐震改修工事を実施済みの庁舎が、震度7の地震を2度被災し、使用できなくなってしまったケースもありました。

 さらに、庁舎等の集約化については、今のように行政機能が分散していると、行政サービスの内容によって異なる庁舎への移動が必要であり、また、どこへ行けばよいのか分かりづらくなっています。市民の利便性の向上の側面からさらに議論を深めてまいります。

 次に、「『湖南市東庁舎建て替え・複合庁舎整備基本設計』の是非についての湖南市民の意思を明確に示すため、住民投票条例の制定の請求を行う」と請求の要旨にあり、さらに、本条例(案)第1条に「この事業計画の実施前に、事業計画の可否について湖南市民の意思を確認することを目的とする。」とあります。

 しかしながら、投票の方法について規定する第6条第3項において、「投票資格者は、東庁舎建て替え・湖南市複合庁舎整備基本設計を是とする者は賛成の欄に、否とする者は反対の欄に自ら〇の記号を付して投票しなければならない。」とあり、これでは東庁舎の建替えそのものに対しての是非を問うのか、あるいは複合庁舎整備基本設計の内容についての是非を問うのかが不明確となっています。例えば、庁舎建設には賛成であり、バリアフリー化など設計内容の一部の変更だけを求めようとする人についても「否」を選ばざるを得ず、その投票結果から「事業計画の可否」についての「湖南市民の意思を明確に示す」ことはできません。万人が設計書の隅々まですべてに納得する庁舎設計というものは現実にあり得ず、限定された諸条件のなかで工夫を凝らして最大公約数に取りまとめるものであるにもかかわらず、基本設計の是非を問うていることは、意図的に反対者を増やすために投票行動を誘導しようとしていることが明らかで中立性を欠いていると言えます。そもそも、根本において建て替えの是非と基本設計の是非というまったく異なる設問をひとつの問いに混ぜ込んで問いかけている法制度設計上の欠陥がある条例(案)であり、多額の税を原資に住民投票を実施したとしても、その結果にまったく中立性と正確性が担保されない実現不可能な条例(案)であると申せます。

 また、請求の要旨において、「莫大な建設費用を要することになる庁舎建て替えは、現在生活する市民はもちろんのこと次世代の市民にも大きな負担を強いることになります。従って、多くの市民の意思が示された上で、それが尊重されて決定されることが地方自治の精神からも必要だと考えます。」とありますが、本条例(案)では、「多くの市民の意思」を確認するための投票の成立要件として有効投票率の規定がありません。

 もし、「多くの市民の意思」を市政に反映するのが目的でであれば、少なくとも常設型の住民投票条例を制定している多くの市が採用しているような、投票資格者数の2分の1以上の投票数を必要とすることが望ましいと考えますが、その規定がないことに条例制定目的以外の目的があるのではないかとの疑問を持たざるを得ません。

 また、「次世代の市民にも大きな負担を強いる」としながら、現在の市民の投票行為だけで決めてしまうということは明らかに請求の要旨に反し、次世代の市民の権利を安易に奪うことにつながります。将来に対する責任は、有権者を背景に代議する議員の皆様の熟議により慎重に決められるべきものであると考えます。

 さらに、「莫大な建設費用」の「莫大」の定義も明らかにされていないことから、今後の駅舎バリアフリー化や老朽化したまちづくりセンターの建て替え、橋梁の架け替えなどに関してもいちいち住民投票を行わなければ論理矛盾となり、熟議による合意形成が阻害されることで市民の間が分断されることを憂慮します。

 そして、第9条においては、無効投票について第1号から第5号までの規定を設けていますが、第6号として、これに「白紙投票」がなければ、無効投票数について確定ができず、現実の開票事務がまったく不可能となります。

 さらに、住民投票の結果に関する市長の義務について規定している第14条においては、市長のみが住民投票の結果を尊重することになっていますが、わが国の地方自治法は首長と議会の二元代表制を採用しております。住民投票は間接民主制を補完するものであることから、住民投票の結果は、市長のみならず議会においても尊重されなければなりません。もし、本条例(案)が議会を結果尊重義務の対象から意図的に外したとすれば、議会の重要性と議員の職責をあまりにも軽視したものと言わざるを得ません。

 そして、先に述べましたように、「湖南市民の意思を明確に示す」ことができない実行不可能な条例により生じた、正確でない結果の尊重を市長のみに課していることは、誤った執行部提案を議会に対して強要するものであり、まさに熟議に基づきより良い合意形成をしようとこれまで努力されてきた議会の軽視であると申せます。

 議会においては、平成28年6月に「庁舎及びその周辺の公共施設の整備計画について、市民目線に立ち、誰もが使いやすく、安全・安心な暮らしを支える拠点となり、財政的にも将来に大きな負担とならないよう調査すること」を目的に、各会派から1人と副議長で構成された7人による庁舎整備特別委員会を立ち上げていただきました。当初は松山克子委員長、森淳副委員長、矢野進次、上野雅代、松井圭子、加藤貞一郎、桑原田美知子各委員が、また、平成29年11月からは堀田繁樹委員長、菅沼利紀副委員長、赤祖父裕美、加藤貞一郎、松井圭子、細川ゆかり各委員が、基本計画の策定から実施設計を行っている現在に至るまで、文字通り真剣に17回にもわたる議論をいただいてきたところであり、執行部といたしましても議会のご意見を伺いながら進めてまいりました。そして、今では議長を除く全員の議員で庁舎整備特別委員会を構成していただいており、議員の皆様が慎重に審議いただく場が作られております。

 住民投票は、間接民主制を補完するものであり、住民が直接その意思を表明することができ、住民自治を醸成させる有効な手段であることは理解するところでありますが、本市におきましては、これまでも議会における間接民主制が十分に機能しており、これからも機能し続けるものと承知しているところです。

 なお、実行不可能な不備事項をいくつか指摘いたしましたが、条例(案)を修正議決する場合には、原案に賛同して署名された3,380名の民意を議会で修正することとなり、直接市民の意思を明確に示そうとする条例(案)の根本趣旨とはまったく矛盾することを付け加えます。

 最後に、本音で申しますと庁舎改築には触れたくなかったと当初から申し上げ続けておりますが、これは、社会経済情勢の変化を適切な時期に的確に捉える必要があり、また、将来世代との負担のあり方や現在の総合行政における財政配分など精緻な議論が必要であるため、一概に即決する判断が難しいためです。そうした意味でも、執行部としては引き続き複合庁舎整備事業につきましては、長期的な視点から市民のみなさんのご意見や社会経済情勢の変化をしっかりと捉え、悩みながら検討を続けてまいる所存であり、議会における代議制の熟議にも大きく期待するものであります。

 以上のことから、市としましては、今回の「東庁舎建て替え・湖南市複合庁舎整備基本設計の是非を問う住民投票条例」制定の必要性は無いと考えます。

 以上、湖南市東庁舎建て替え・湖南市複合庁舎整備基本設計の是非を問う住民投票条例の制定につきましての意見とさせていただきます。

 慎重なご審議を賜りますようよろしくお願い申し上げます。》

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