2010年12月30日

2010キャンドルナイトIN月形 冬至パーティ

12月23日(木)天皇誕生日の祝日に、地球を愛する会@月形主催の『キャンドルナイトIN月形 冬至パーティ』がありました。会場は月形町多目的センター。参加者は総勢30名。

もともとのキャンドルナイトは、夏至や冬至の夜に『でんきを消して、スローな夜を』という呼びかけとともに、地球環境、家族や地域の絆を意識しようとする運動です。地球を愛する会@月形は3年半前の夏至から取り組んでいます(2007夏至2007冬至2008冬至2009冬至)。

今回のキャンドルナイトは『地域再発見』を大きなテーマに据えました。

2010candle3.jpg具体的には・・・

◎「地産地消」として

 月形産のカボチャ、小豆、卵を使ったお料理づくり。
 地産地消は輸送エネルギーの削減に役立つだけでなく、地域循環を活発にして地域経済を活性化。経済的バックアップも含め、地球温暖化防止に繋がります。

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◎「再利用&家庭でもキャンドルナイト」として

 空知総合振興局地域環境課の皆さんが協力。卵の殻(お料理用の再利用)にロウを流し入れてキャンドル作り。参加者のお土産に。ご自宅で家族と一緒にキャンドルナイトを!

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◎「地域をもっと知る」ことで、地域に愛着と誇りを持ち、地域を活性化しよう。

 地元バンド『ノース・ファーム・ワン』が「町内のお店・勝手にPRソング」を演奏。

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◎ 「月形産を味わう」

 みんなで作った「カボチャの白玉ぜんざい」「カボチャのカップケーキ」「カボチャのサラダ」を食べちゃおう。※カボチャの寒天よせは時間までに固まらず、残念。

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◎「ミツロウを灯して」

 ミツバチが集めた蜜ロウから作った天然素材のロウソクを灯し、文明からちょっと離れて地球環境や日々の生活を見つめ直そう。


全部で3時間、内容盛りだくさんの催しでした。
参加してくれた幼児や中学生、お母さんやお婆ちゃんからは
「楽しかった〜。」
「来年もまたやるんですか? また来ます!」
「楽しい催しなのに、参加者が少ないのは残念ですね。来たら楽しいのに。」
そんな言葉をかけていただいて、主催者としてとても嬉しく、満足感と充実感でいっぱいです。

ご協力いただいた空知総合振興局生活環境課や『ノース・ファーム・ワン』の皆さん、協賛いただいた月形町地産地消計画推進協議会には大変お世話になりました。ありがとうございました。
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今回参加してくださった皆さんは、町内に貼られたポスターや、小中学校に配布したチラシ、12月始めの町報に折り込んだ広報誌を見て「行ってみよう!」と思い立ち、この日、会場に足を運んでくれたそうです。「知り合いに頼まれたから参加する」のではなく、自発的に参加してくれたのが何よりも嬉しかったです。

(地球温暖化防止活動だけでなく)環境問題への対応は、現在のところ個人個人の心がけや行動に寄るところが大きく、今回の参加者のように自主的に興味あるものに向かって行動することから始まると考えます。
興味と効果が繋がるような企画をたて、たくさんの人が納得しながら環境問題に取り組めるようにするのが私たち「地球を愛する会@月形」の役割なのかと、2010キャンドルナイトを終えて感じました。

それともう一つ。
今回使った会場は多目的研修センター。ホールは400人をも収容できるような広さです。様々な企画を行うために、調理室や洋室など全館貸し切りました(月形町の規定で、登録団体は使用料無料)。
しかし実際に集まったのは約30人。12月末の月形は暖房なしでは居られない気候なので、全館暖房になりました。・・・そのためのエネルギー消費は? CO2排出量は?・・・そう考えると矛盾が出てきました。

イベントを行うためには考えなければならないことがたくさんあります。

月形観光協会・2010クリスマスイベント

観光協会クリスマスイベントは例年よりちょっと時期を早め、12月22日に行われました。

今年は(一昨年同様)またも雪がない状況のため、思い切って円山まで雪を取りに行くことに。
観光協会のメンバーと役場職員数名とで軽トラックに資材を積み込み、車に乗って向かいました。

20101222a.jpg円山公園のソフトボール場には手つかずの雪がありましたが・・・やっぱり積雪10cm。しばらく新雪がなかったので表面は(埃などで)ほんのり茶色に変色していて残念。でもそんなことは言ってられません。バケツに一升瓶を突き立てた「特製スノーランタン型」に、ザラメ状の雪をかき集めて詰めていきました。

約1時間後、目標(開町130年にちなんで)130個に達したのでスノーランタン作りは終了。

20101222b.jpg会場である役場前駐車場に戻ってくると、他のメンバーがメタセコイヤの木の周辺や役場正面玄関付近にスノーランタンを設置し、その中にロウソクを入れているところでした。

これと並行して他の作業も進行。
商工会商工部の皆さんは雰囲気を盛り上げるための音響設備を設置したり、参加者に配布するお菓子(今年はちょっと豪華に、観光協会からのお菓子セット+商工会の商品券付き。子育て支援として商工会が独自にプラスしたそうです。有り難いですね。)や温かい飲み物の準備をしていました。
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みんなで一緒に作業を進め、午後3時40分にはロウソクに火を灯して会場設営は終了。

折しもこの日は冬至。日の入りは午後4時3分(札幌)。

辺りが徐々に暗くなってくると、自宅で作ったアイスキャンドルを手に小さなお子さんとお母さんが次々と集まってきました。

お母さん達にお話を聞くと・・・例年より気温が高かったせいで屋外でのアイスキャンドル作りは難しく、冷凍庫で作り上げた人がほとんどの様。冷凍庫のスペースの関係でそうたくさんはできないですよね。イベントの前から準備して参加してくれて、ありがとうございます。

20101222c.jpgそうこうしていると、月形中学校生徒会の面々が「歳末助け合い」の募金活動のために会場に。道をはさんでJA月形店舗前でも月形高校生徒会が募金活動を始めました。

私たち作業班は外での活動を前提にスキーウエアに防止に手袋の完全防備。中高生は・・・寒そうでしたね。それでも行き交う人に声をかけ、募金を呼びかけて多少の成果はあったようです。

20101222d.jpgさて午後4時30分。月形観光協会会長からの挨拶のあと、カウントダウン! 

メタセコイアが空中に浮かび上がりました。

電飾での飾り付け、今年も新たなデザインで目を楽しませてくれています(昨年のデザイン)。

このあと、月形町のゆるキャラ「ベルデ君」がサンタさんになり、アイスキャンドルを作ってきてくれた子ども達にお菓子をプレゼント。
楽しい雰囲気の中、クリスマスイベントは終了しました。
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今年のクリスマスイベントはアイスキャンドル持参のお子さんやお手伝いの会員の数こそ少なかったものの、月形中学校や月形高校の生徒会の皆さん、商工会商工部の皆さんなど新たな顔ぶれが加わって華やかになりました。もちろん雰囲気を盛り上げる「音楽」の存在も見逃せません。

開始から4年経ったことで主催者にマンネリ(!?)感があるのかもしれませんが、この時期にほんわかと集まれる行事はなかなかないもの。せっかく定着してきた行事なので、これからも続けられるよう、日程調整や声かけ、雰囲気作りなど、私も観光協会の一員として色々と手をかけて伸ばしていければと思っています。

何だかんだ言っても、私は企画や裏方が好きです。今日は一日楽しめました。

2010年12月11日

第3回北海道アライグマ慰霊祭&小講演会(2)

続きです。ここでは小講演会の内容を紹介します(私の印象に残った点を記載します。)
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1.北海道の外来種対策について 
           猪川周二氏(北海道環境生活部環境局)

■外来種について
・外来種問題:野生生物が本来の移動能力を超え、国外または
       国内の他地域から人の行為によって導入され、その生物(種)がその地域に固有の
       生物相や生態系に対して大きな脅威になっている問題
・外来生物法(特定外来生物による生態系等への被害の防止に関する法律)平成17年6月施行
・生物多様性基本法 平成20年6月施行
北海道ブルーリスト(北海道における外来種リスト)
・現在、外来種とされているのは2,000種以上。うち道内には860種。全てが駆除対象ではない。
 (駆除対象=特定外来生物は全国で97種が指定されている。アライグマもその1つ)
・外来種の問題点:1)生態系の破壊、 2)菌の媒介、 3)食害(農業被害)
■北海道のアライグマの状況
・目撃情報:平成4年 13市町村 → 平成22年12月現在 136市町村
・捕獲に熱心な自治体:札幌市、石狩市、江別市、月形町など
・現在は市街地と農地を中心に捕獲 → 森の中に残ってしまう
                   根絶に向けた対策必要:例)木にかける巣箱型ワナ
・分布を把握するための手法:カメラトラッピング調査、ペットボトルトラップなど
■外来種対策=「入れない」「捨てない」「広げない」、様々な連係プレー   

2.アライグマとはどんな動物か?      阿部 豪氏(兵庫県立大アライグマ研究グループ)

■アライグマの現状
・神戸市(兵庫県)は超高密度地域。母集団が大きくなっていて酷い状況
・北海道は低密度地域。この段階での対応が重要だが、労力と成果のバランスの悪さ(ワナを掛けて
 も捕獲できないなど)から住民意識の低下がおき、対策を進める上で新たなの課題が出てくる。
■アライグマの生態
・アニメ「あらいぐまラスカル」はアライグマの生態をよく現している
・発情期前(子ども)のアライグマはとてもなついてカワイイ(ラスカルの様)
  → 捕獲オリにかかった子どものアライグマを飼いだしても、発情期を迎えると凶暴化。
    力や勢いもあり、1年以内にオリを破って逃亡するか、2次放出 → 生息域の拡大
・アライグマは飼うには不向きな動物
■捨てられた命は、決して幸せにはならない
・飼いきれなくなったペット → 野山に放つ → 大半は死亡(ほとんどが交通事故)
 ・・・生き残ったモノ → 生きるために手に入りやすい食料や住居を求める
                 → 農業被害、住居侵入 → 駆除 → 死
・道内で1年間に駆除されたアライグマ数: 4,115頭(平成21年)

■質疑応答
Q アライグマにしかできない行動を応用した、具体的な対策はできないか?
A アライグマは3次元的に行動するので、木の上にオリを仕掛けるなども考えられる。
  多様な方法の研究は必要と考えるので、国などにも要望している。

Q アライグマのみに効くような毒餌の開発や、アライグマトラップでの毒餌の使用はどうか?
A こぼれた毒餌を他の生き物が食べる可能性や、毒餌で死んだアライグマを他の動物が食す問題
 (生物濃縮)など検討課題が大きい。また自然界での毒物の使用には社会的な合意形成が必要。
  まずは地域全体で対策を取ることが先決ではないか。毒餌を使う様な段階ではないと思う。

3.畜産地帯で捕獲されたアライグマのサルモネラ保菌調査  藤井 啓氏(道総研 畜産試験場)

・サルモネラは人獣共通感染症の病原体の1つ
・様々な対策をしているにもかかわらず、道内の牛のサルモネラ症発生は続いている
・アライグマ、カラスは保菌が確認された。
・ネズミは全く保菌していない。
   ↓
 アライグマ・カラス・牛の間には、直接的または間接的に何らかの関係がある → 対策必要

4.中学理科としての外来生物へのアプローチ 北海道中学校理科教育研究会

新指導要領で初めて「外来種の扱い」に言及している(平成20年からの移行期間から対応)
 ただし、学習時期は中3の1〜2月。通り一遍の知識までしかできない。
■特定外来種アライグマの理科授業での教材化
           ・・・三浦雅美氏(札幌市中央中学校)

・中2の「動物の身体の仕組みと生活」
 〜アライグマの身体の特徴と生態〜の単元で実施
 アライグマ研究グループ代表の阿部豪氏との共同事業で実現
・アライグマとタヌキを比較し、同じ作りでありながら生態的
 特徴は全く違うことを学習。標本(右の写真)も活用。身近
 な自然、生態系、多様性、人為的行いとその影響等を考える
・与えられた知識だけでなく、自らの考えを持つことが大事。
 道徳的示唆もあった。
■その他・・・佐々木彰彦氏(札幌市福井野中学校)
・生徒には、全ての知識がバラバラに入っている。知識と現物
 が繋がっていないのが現実。
・「何かが違う」ということに気付きにくい。
 現物を見せることで、その後の生徒の反応が全く違ってくる。

5.月形町の取り組みについて(書面による報告)   今井 学氏(月形町※)

■アライグマ捕獲の実践を通じて得た知識や捕獲方法についての情報提供
・今井氏本人の経験にもとづいてまとめた資料の配付(PDF
■月形町の状況
・月形町では平成14年に最初の目撃。平成17年から目撃数が増え、平成19年から本格的な取り組み
 [捕獲数の推移]H19年度:35頭、H20:129頭、H21:174頭、H22:30頭(予測)
・効率的な捕獲により月形町内(の居住地、農地付近)では密度が減少している。
■アライグマの被害対策を進める上で重要なこと
・被害者の意識の改革が重要。行政お任せでなく、被害者自らが対策を練り対応していくこと
・情報の共有化など、ネットワークが重要
・捕獲方法の確立、行政の迅速な対応(予算、体制)、町民の積極的な行動 → 成果
■意見交換から
・被害対策の成果が出たあとの対応が重要であり、難しい。
  捕獲数が減少しても捕獲圧をかけ続けること。
・市街地、農地での生息密度は減少しても、奥地や山間部での状況は分からない。
・教育との連携。道徳心への訴えかけなど、様々なアプローチでの対応が必要か。

※今井さんは月形町有害鳥獣の担当職員であり、猟友会の一員としてもアライグマの駆除に関わってきました。個人的にアライグマの生態や駆除方法について研究を重ね、その成果を個人のHPで公開しています。また職務として、捕獲技術に関する講習会(第1回第2回)を開催しています。
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アライグマ=外来生物というくくりで、同じ農作物被害を出している「シカ」とは所管が違っていることを知りました(言われてみればもっともなことですが・・・)。現場での課題を解決しようとした時、それを仲介する立場(末端行政職員か、研究者か、議員か・・・?)の人はこれら制度に精通した上で「通訳」「仲人」「プロデューサー」にならなければならないのですね。関係者の熱い思いがありながら、それらがスムースに進まない現実を垣間見た想いです。

私はこれまで「農業被害」の観点から「アライグマ」に関心を寄せてきましたが、ここに集まった人達は様々な視点で「アライグマ」を捉えていたことがとても興味深く、考えさせられたと同時に新たな展開のヒントも得ることができました。ネットワーク作りとは、縦方向も横方向も必要なのだと改めて感じました。

月形町における次の展開は、やはり「教育との連携」でしょう。学校教育ばかりでなく、地域生活に密着した中で、道徳的観点から進めるべきと感じました。そのためには、まず行政が縦割りの意識を変えなければなりません。そこに議員としての私の役割もありますね。

2010年12月10日

第3回北海道アライグマ慰霊祭&小講演会(1)

議会関係の話題が続いたので、今日はちょっと違った視点の報告を。
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先の日曜(12月5日)の午前、北海道大学大学院獣医学研究科で行われた『第3回北海道アライグマ慰霊祭&小講演会』に参加してきました。主催は北海道アライグマ慰霊祭実行委員会(アライグマ研究グループと北海道環境生活部環境局自然環境課特定生物グループの有志)です。

会場には道内を中心に各地から、様々な形で「アライグマ」に関わっている約50人が集まりました。
私が名刺交換できたのは、研究者、行政関係者、狩猟者、ワナのメーカー、中学校教員の方々でしたが、他の関係者もいらしたかもしれません。いずれにせよ、多様な視点で「アライグマ」を見て、考え、新たな視点に気付かされた「慰霊祭」でした。

この慰霊祭には3つの目的があります。
1)人が関与したことで害獣の扱いとなって処分された、アライグマの冥福を祈る
2)アライグマが野生化したことで影響を受けた生物(在来生物)の冥福を祈る
3)人の行為が生態系に作用している現実を再認識する

詳しく説明すると・・・

 アライグマは北海道にはペットとして持ち込まれたものの、その生態(小さい時には人なつっこくかわいいが、生殖期を向かえると凶暴化する)の為に、飼いきれなくなって野山に放されたり、あるいはオリを破って逃亡して(多くは死んでしまったものの、生き残ったものは)野生化し、現在生息範囲を広げている。野生化したアライグマは生きるために必死で、手近な餌である農作物を荒らしたり、住居として納屋に侵入したりしたため、「害獣」扱いされ、駆除の対象になった。・・・(1)

 一方、もともと北海道に住んでいた生き物(在来生物)にとっても影響があった。凶暴なアライグマに住処や餌を奪われたり、アライグマを捕獲するために仕掛けられたワナにかかる(混獲)などして、影響を受け、死んでもいる。・・・(2)

 これらの多くの命に影響を与えているのは、人間の行為である。生態系の一員である私たち人間の何気ない行為が、生態系の中で多くの生き物に影響を与えている事実を認識する必要がある。私たち自身が行ってはならない行為は何かを考えよう。・・・(3)


 「アライグマ慰霊祭」そのものは獣医学研究科の敷地の奥に建立された「畜魂碑」の前で、この1年に処分されたアライグマと、アライグマを介在として影響を受けた多くの命に対して、参加者全員が黙とうを捧げて終了しました。
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この慰霊祭に参加して、私は今まで[アライグマ=害獣=最適な駆除方法の確立]という認識しかなかったことに気付きました。

自分が農業者として花を栽培している時、あるいは研究員として除草剤の新規開発をしていた時は、植物を中心とした生態系を意識して日々の生活をおくっていました。また趣味の登山の時にも「自然の生態系」を意識して一つ一つの行為に慎重に行動してきました。

しかし、ひとたび「行政(議員)」という立場になると[アライグマ=害獣=最適な駆除方法の確立]という様な一方的な視点でしか見られなかったのだと思うと、自分に残念でなりません。行政こそ多様な視点が求められているというのに・・・。

しかし今回気付いたことで、「アライグマ」に限らず様々な場面で(例えば、住民検診率の受診率向上:数字だけに着目するのではなく、受診者の健康管理や精神的問題、町全体の医療・救急体制の問題、そして町の財政問題等)、想像力を働かせながら多様な視点で課題を幅広く捉えた上で、改善策を提示することができるようになれるでしょう。

大きな「気づき」をありがとうございました。

2010年12月04日

廃棄物資源循環学会北海道支部セミナー(平成22年度)

12月4日(土)午後、北海道大学工学部オープンホールで、今年度の廃棄物資源循環学会北海道支部セミナーが開催されました。今年は事例発表も多岐に渡り数多くあった他、口蹄疫に関する特別講演もあり、例年より広い会場には各方面から120名もの参加者がありました。

ここで全てを紹介出来ませんが、いずれも大変興味深い内容でした。

「廃棄物は資源」という考え方を持って、様々な素材(廃棄物)を経済性のあるモノに変えていこうとするエネルギーがこの廃棄物循環学会にはあります。その考え方で実社会を見ていくと、実に多くの事象が「廃棄物」で繋がり、「業界」「専門」「縦割り」など狭い範疇でおさまりきらない「廃棄物」の姿が見えてきました。
視点と発想が重要、そしてなんと言っても経済性(補助金などの政策投資も含めて経済活動として成り立つのか。環境負荷など将来的な負担も含めた経済性)が鍵になると感じました。

会場で久しぶりに松田從三先生(現ホクレン農業研究所)とお会いし、情報交換させていただきました。松田先生とは月形町内での講演会がご縁で、NEDOの新エネビジョンや一般廃棄物処理の関係でもお世話になりました。専門家の視点や知識は大きな力になります。

以下、プログラム(目次のみ・発表者の氏名省略)と、私の視点での特別講演内容を記します。
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平成22年度 廃棄物資源循環学会北海道支部セミナー
    『北海道における発生抑制・資源循環・廃棄物処理に関する取り組み紹介』

1-01 「北海道グリーン・ビズ認定制度」            北海道環境生活部環境局
1-02 「廃石膏ボードのグラウンド用ライン引き粉としての再生・OEMによる販売」
                                   北清企業株式会社
1-03 「環境と経営の両立、森林保護と廃棄物ゼロへの取り組み」     道栄紙業株式会社
1-04 「北洋大通りセンター新築工事のゼロエミッション化」
     大林・伊藤・岩田地崎・丸彦渡辺・中山・田中共同企業体 北洋大通りJV工事事務所

2-01 「医療廃棄物のリサイクル処理」      空知興産株式会社苫東リサイクルセンター
2-02 「地域環境に配慮した最終処分場計画と跡地利用」         角山開発株式会社
2-03 「北海道における海岸漂着物実態調査」              株式会社ドーコン
2-04 「バイオマス亜臨海肥料化技術研究開発について」
                   (社)日本技術士会北海道支部資源・環境・健康分科会
              (独)北海道農業研究センター・(株)ピーシーエス他道内6企業
                         特定非営利活動法人北海道資源循環研究所

3-01 「ホタテ貝柱の堆肥化による資源化」について              枝幸町農林課
3-02 「廃石こう品リサイクル事業化WGの活動報告」 廃石こう品リサイクル事業化WG事務局
3-03 「石炭灰利用人工海底マウンド技術と北海道における事業化可能性」 株式会社エコニクス
3-04 「資源循環型社会におけるセメント産業の動向」         日鐵セメント株式会社
3-05 「産業界のインフラを活用した可燃性廃棄物の化石燃料代替化」
                      広域北海道有機素材循環利用ネットワーク協議会
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特別講演『宮崎県の口蹄疫による家畜埋却処理と海外の事例』  
              宮崎大学工学部土木環境工学科 助教 関戸知雄氏

■口蹄疫とは
・口蹄疫そのもので死ぬのではなく、家畜の価値が下がることが問題
・様々な型(type)が存在し、相互にワクチンが効かない。抗原は著しく多様。容易に変異。
・酸性またはアルカリ性に振ることで防除できる
  例:低温条件 pH7.0〜9.0で安定。pH4で15秒間、pH6で2分間で死滅
・現段階の口蹄疫対策や対応は、経験的にやっていかなければならない状況。研究途上。

■口蹄疫防疫措置の実態
・マニュアルでは「異常家畜が疑似家畜と決定後原則として24時間以内に殺処分。
     ↓               疑似患畜と判定後72時間以内に埋却を完了」
  現場では時間的余裕がなく、不眠不休で対応しなければならなかった。
  今後、大規模農家は埋却方法まで考えて営農するようになる。
        (宮崎の集約的営農ならではの問題)

・焼却処理は時間的な問題でできなかった。
  また、発生地が住宅地と隣接しているので、家畜を動かすリスクを考え埋却処分した。
・当初、法律だけでは防ぎきれず。
  新たな対処[半径10km圏内の家畜全島にワクチン接種
                  →殺処分]で終息した
・感染ルートは現在調査中
・埋設方法は試行錯誤の末にたどり着いたもの(右図)

■埋却により発生した問題
・悪臭
・体液の噴出
 (シートの隙間から地上に噴出。雨などの自然圧もある)
・礫による農地の荒廃(埋却のはほとんどが自前の農地。深さ4mも掘り返すことで礫が出てくる。
           それを短時間でうめ戻すため、上下転地され良質な表土がない状態)
・3年は発掘禁止(法律による)
・環境汚染への不安(ガスや汚水の問題 → モニタリング実施中)
・多量の石灰散布による粉じんと臭い
 (一般人では2、3日間の作業後には休まざるを得ない状況になる)

■イギリスの事例
・2001年発生、約600万頭を殺処分、主に羊
・家畜、トラック、人の異動によって伝搬。風による伝搬も確認されている。
・約30%は焼却された(多くは野積み焼却)
・結果的に大規模な環境汚染はなかったのではないか
 (文献等あたってもあまり資料が見あたらない。現在も調査中)
・埋め立て地からの浸出液調査で、
  COD(化学的酸素要求量、水質の指標の1つ)は急速に濃度が減少。
  アンモニア態窒素は、5年経過しても濃度が上昇したまま → 長期化の可能性
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この特別講演で「現場」を知ることができました。
当時の報道やインターネット情報で、現地の悲惨さや非常さを多少なりとも知っていたつもりでしたが、現場そのままの声は響きました。画面や紙面からは「臭い」は解りませんし、本当の惨状も写してなかったのは当然でしょう。その中で、いかに現実の課題を想像できるか・・・その手だてとなる情報が盛りだくさんで、貴重なお話でした。ありがとうございました。

口蹄疫の惨事は二度と起こしてはならないと、あの時も、今も思っています。ただ感染ルートが未だ解明されていないことや、アジア大陸でまたも発生したこと、現状では有効な手だてが確立されていないことなど、研究途上であることが不安の種ですが、同時に研究が日夜進められているのもわかりました。

行政の役割として、今回の経験とこれからの研究成果を生かし、いつ非常事態が起きても対処できるような体制作りが求められるでしょう。これは宮崎県下だけの問題ではなく、北海道や月形町にも当てはまります。そのためにはまず今回の行動検証が重要ではないでしょうか。
どんな問題もツボは一緒の様な気がします。

関係者の方々、研究者の皆さん、今も日夜努力されていることでしょう。
どうかよろしくお願いします。

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